文字検査とは、部品や製品に印字された文字を確認・判別・判定する検査です。印字検査とも呼ばれる技術で様々なシーンで活用されています。
部品・製品には、管理のために賞味期限や製品番号などが付与されていますが、正確に読み取り、判別・判定し、蓄積・管理できなれば意味がありません。そこで近年では、撮像したデータから文字を切り出し、判別・判定をする文字検査が普及しています。こちらでは、OCR(Optical Character Recognition)と呼ばれる文字認証やOCV(Optical Character Verification)と呼ばれる文字照合の基礎知識、また文字検査の基本原理についてご紹介します。
食品・医薬品であれば賞味期限、製造現場であれば組み付ける部品番号、そのほか受発注管理などで欠かせない文字列。このような文字列は管理のために非常に重要ですが、一方で管理の手間がかかります。
例えば、受発注や在庫数を手書きの帳簿で管理しているとします。手書きでの管理は記載ミス・漏れが発生することもありますし、もし帳簿を紛失してしまえば受発注・在庫数が分からなくなってしまう可能性もあります。
ヒューマンエラーの防止に加え、確実な管理、手間とコストの削減のために画像処理のニーズが高まっています。人間の手によって行っていた文字の認識・判別・管理を画像処理システムに置き換えることで、以下のようなメリットを得ることができます。
文字検査では、撮像した文字を登録しておいた辞書(文字フォント群)と比較し、近い形をした文字として認識します。その文字を判定文字列と照合し、最終的な検査の合否を出力します。出力された判定結果はサーバなどに蓄積することも可能です。そのため手書きのような記帳ミス・漏れを防ぐことができます。
画像処理技術を活用した文字検査では、認識した文字情報をサーバなどに書き出すことができるので、記載ミスなどが発生する恐れがありません。文字数の多い製品番号などは記載ミスも発生しがちですが、デジタル情報として扱うことでトラブルを未然に防げるというわけです。
また、製品番号などの情報管理を徹底することで不良品が流出したり、リコールが発生したりしても、該当部品・製品を追跡でき速やかに回収できます。逆に問題のある工程に特定して業務改善に役立てることも可能です。このように確実な情報管理はトレーサビリティの確保にも有効です。
近年では商品管理にバーコードや2次元コード(2Dコード)が利用されるようになりました。バーコードや2次元コードだけであれば、バーコードリーダやハンディターミナルで読み取り可能です。しかし、バーコード・2次元コードと賞味期限がラベルに記載されているケースもよくあります。文字検査ではコードと文字の両方を同時に認識することも可能。従来なら個別に読み取っていたものを一括で読み取り、管理できるので非常に効率的です。
不良品の流出を防ぐためには全品検査がもっとも効果的ですが、目視で文字検査をしていては手間も時間もかかりますし、何より「見逃し」というリスクが発生します。画像処理を活用すればインライン上で確実な文字検査が可能になり、品質保証と人件費削減が同時に実現できます。検査工程での歩留まりも解消でき、生産の効率化にも非常に有効です。
文字検査は、目的によって「印字有無」「印字品質」「文字照合(OCV:Optical Character Verification)」「文字認識(OCR:Optical Character Recognition)」などに分けられます。
印字有無
印字の有無を検出する検査です。
印字品質
読み取れない文字を検出する検査です。
文字照合(OCV)
印字されている文字と判定文字列を比較して合否判定をする検査です。
文字認識(OCR)
印字された文字を読み取り、照合や制御のために出力します。
上記のように文字検査といっても様々ですが、その基本は撮像した画像から1文字ずつ切り出し、登録しておいた辞書と比較して文字を認識することです。
1.文字の切り出し
撮像したデータから1文字ずつ文字を切り出します。
2.辞書との照合
切り出した文字と登録された文字を照合し、文字を特定します。
以前は文字認識の精度の低さが指摘されることもありましたが、現在では様々な技術革新により文字認識の精度が飛躍的に向上しました。
1文字に対して複数のパターンを登録しておくことで認識安定度が向上します。サブパターンとして各種フォントを登録しておくことで、フォント違いによる認識ミスを防止することも可能です。
各文字を1つだけ辞書登録した場合
1文字に対して複数のフォントを登録した場合
文字を切り出す際、自動で最適な切り出し状態に微調整する処理を「自動フィッティング」と呼びます。文字毎の微妙な変化を補正してから照合するので認識度が上がります。
自動フィッティング なし
自動フィッティング あり
印字部分の背景に柄があったり、反射しやすい金属だったりすると文字検査の精度が低下することがあります。そのような読み取りが難しいケースでも前処理フィルタを組み合わせることで安定して文字検査が可能です。
不良品の流出防止はもちろん、徹底した管理体制の構築による品質改善、またトレーサビリティの確保にも欠かせない文字検査に画像処理を活用した具体例をご紹介します。
文字検査が積極的に活用されている業界として、食品・薬品業界が挙げられます。その代表的な例が賞味期限の文字検査です。画像センサで賞味期限を読み取り、日付の間違いや文字抜けの検査をします。また、全数検査を実施することで賞味期限切れの混入なども防ぐことができます。
ICチップやコネクタ、LEDなどの梱包資材として使われるエンボステープ内の文字検査では、テープ越しに撮像するため照明によるハレーションがランダムに発生し、誤認識の原因になることがあります。しかし、前処理フィルタ(リアルタイム濃淡補正フィルタ)を使用することで、ハレーションの影響を受けずに確実な文字検出が可能です。そのほか容器やフィルタ、反射しやすい金属部品などに対しても有効です。