トラブルの要因と対策

トラブルの要因を理解し、対策することが大切

流量管理で発生しやすいトラブルの要因をまとめました。流用管理では、常に監視し、正確な計測を行う必要があります。もし流量計・流量センサに異常が発生すれば、それが原因で製品品質や生産効率の低下、工作機器の破損を招く可能性もあります。メンテナンスや修理に時間がかかれば、費用はもちろん大きな機会損失にもつながるでしょう。そのような重大なトラブルを引き起こさないように原因を理解し、しっかりと対策して流量管理することが大切です。

1. 結晶化した「スケール」

地下水や水道水に含まれる金属イオンが結晶化し、配管内壁に付着したものを「スケール」と呼びます。主成分はカルシウムやマグネシウム、ナトリウムなどで、何層にも重なって付着すると配管の流路を狭め、流量低下を引き起こす原因になります。そのほか流量計内部に付着したり、配管内壁から剥離した“かけら”が可動部に詰まったり、伝導率を変化させて誤作動を招いたりする恐れもあります。

対処方法

浮き子式や羽根車式のように流体と直接接触する流量計・流量センサは、スケールを除去するために定期的なメンテナンスが必要です。電磁式は基本的にトラブルが発生しにくい傾向にありますが、流路内部にスケールが厚く付着すると電圧を感知できなくなるので、定期的なメンテナンスと校正が望ましいでしょう。

2. 流体内の異物「スラッジ」

浮遊物や沈殿物など、流体内にある異物を「スラッジ」と呼びます。広義では、水に混じった泥や土砂など、製造ラインであれは研磨・切削などで出た小さな「キリコ(切り粉)」などもスラッジに当たります。スラッジは、常に流体と共に流路内を循環し、流量計・流量センサのつまり、ノイズ成分としての外乱要因になります。通常は流体内の異物(スラッジ)を取り除く「ストレーナ」や「マグネットセパレータ」を用いて除去しますが、完全に除去することが難しく、定期的な点検や清掃が必要です。また、スケール同様に流路や流量計の詰まりや破損、流路を狭める要因にもなります。

対処法

定期的にストレーナやマグネットセパレータに付着したスラッジを除去したり、ストレーナやマグネットセパレータ自体を交換したりすることでスラッジによるトラブルを防げます。電磁式など貫通構造の流量計であれば詰まる可能性は低いですが、電極にスラッジが衝突するとノイズ成分が発生して誤作動する恐れもあります。その場合は応答時間を遅くしたり、検出サンプリングの回数を増やしたりすることでノイズ成分を無視できます。

ストレーナ

ストレーナ

3. 鉄配管に発生した「サビ」

鉄配管の場合は、酸化によって流路内壁に「サビ」が発生することもあります。サビが発生すると、スケールと同様に流路を狭めて流量低下を招いたり、サビが剥離して流量計内部に詰まったり、流量計の透明部に付着して数値を確認できなくなったりします。

対処法

基本的にはスラッジと同様で、ストレーナやマグネットセパレータの装着と、定期的なメンテナンスや交換でトラブルを防げます。電磁式の場合も同様で、応答速度や検出サンプリング回数の設定変更によりノイズ成分を無視できます。

4. 粘着性で泥のような「スライム」

水中の藻類や微生物などによる生成物を「スライム」と呼びます。スライムは粘着質で、泥のような形状をしているため、配管や流量計の詰まりを引き起こす可能性があります。

対処法

流路内で詰まりやすいので、内部に可動部のある流量計・流量センサであれば定期的な清掃とメンテナンスが必要です。電磁式などの貫通構造であれば、詰まる可能性が低いのでメンテナンスの頻度を最小限に抑えることができます。

粘着性で泥のような「スライム」

5. 微粒子を含んだ「スラリー」

石灰と粘土を混ぜた石灰水、研磨剤を含んだ液体など、固形粒子を均一に含んだ液体を「スラリー」と呼びます。「泥漿(でいしょう)」とも呼ばれ、ドロドロと粘度が強い流動体であることが多く、個体粒子による流量計内部の磨耗、凝固による詰まりの原因になります。

対処法

基本的にはスライムと同様です。定期的なメンテナンスを実施するか、流路を確保しやすい貫通構造の流量計・流量センサの採用が望ましいです。

6. 流体中に発生した「気泡」

液体と一緒に取り込んでしまったり、液体中に溶け込んでいた空気や不純物が温度変化で気化したりすると発生するのが「気泡」です。渦式流量計ではカルマン渦の発生を、超音波式流量計では超音波の伝搬を阻害し、誤作動を引き起こす原因になります。

対処法

体積流量計の場合は気泡の影響を受けるので、精度が必要な場合は質量流量計への変更もご検討ください。コリオリ式であれば、気泡の影響を受けずに流量計測することができます。

流体中に発生した「気泡」

7. 不均一な「流速分布」

十分な直管部を確保した円形配管であれば、流速分布は均一になりますが、実際の配管には曲げや分岐、口径の変化が多く、その影響を受けて流速分布が不均一になります。流速分布の中心が配管中心からずれる「偏流」、流体が流れに平行な軸を中心に回転しながら流れる「旋回流」などが発生すると測定誤差が大きくなることがあります。

対処法

流速分布を均一にするには、流量計・流量センサの上流部に十分な直管部を設けることです。直管部の長さは、流路口径の5倍以上、偏流・旋回流などが激しい場合は20倍を目安にしましょう。それでも影響が大きい場合は、バルブや絞りなどを設置します。

不均一な「流速分布」

8. 流量・流速が変化する「脈動」

流体を送るポンプの性能によっては、脈を打つように周期的に流量・流速が変化する「脈動」が発生します。脈動が大きく、瞬間的に定格流量を超えてしまう場合は、実際の流量よりも小さく数値が表示されることがあります。

対処法

脈動は、一般的に容積式往復ポンプで発生します。また、回転容積式のポンプであっても1分間に10回転程度の低速回転では脈動が発生するケースもあります。対策方法としては、脈動が発生しない「多連型往復運動ポンプ」「非容積式の渦巻きポンプ」などへの変更、ポンプの吐き出し側に脈動を緩和する「エアチャンバ」「アキュームレータ」などを装着するなどの方法が挙げられます。また、脈動は周期的な変化なので、流量計の応答時間を長くすることで安定化を図ることもできます。

9. 配管に発生する「振動」

流体を流したり、バルブを開閉したり、接続されたポンプや工作機器の振動が伝わると配管に振動が発生します。この振動によって計測誤差が発生することもあります。

対処法

コリオリ式やカルマン渦式は、振動の影響を受けて流量を正しく測定できない場合があります。電磁式や超音波式は、基本的に振動の影響を受けずに計測できます。そこで振動の影響を受けやすい場所では、電磁式や超音波式の流量計・流量センサの採用が望ましいでしょう。

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