ひずみ計測の用途・事例
製品強度や構造を検討する際に重要な項目が「ひずみ(strain)」です。ひずみは物体の変形状態を表す尺度で、基準(初期)状態からの伸び(縮み)を比率で示しているので単位はなく“無名数”扱いとなります。一般的には「○○ST」や「○○ε」と明記し、部材軸方向に沿った変形を「垂直ひずみ」、部材軸と垂直方向の変形を「せん断ひずみ」と呼びます。ここでは、研究開発系用途と生産現場系用途に分け、電子デバイスや電気機器、自動車、金属・鉄鋼などの業界でのひずみ計測事例をご紹介します。
研究開発系用途
自動車業界クラッチ耐久性試験・ひずみデータ解析
自動車用クラッチの性能試験では、操作したときにクラッチ板にかかる圧力や応力(ひずみ)、温度を測定し、材料強度と照らし合わせて耐久性能を算出します。通常は実車試験後にオフラインでひずみなどを計測し、解析を行います。キーエンスのマルチ入力データロガーNRシリーズであれば、ひずみのほか温度なども素早く計測可能です。また、レーザ変位計などを使用することで、非接触で対象の形状変化を計測することができます。
電子デバイス業界プリント基板の強度・ひずみ解析
電子機器の高機能・小型・薄型化により、プリント基板上の高密度化が進んでいます。そのため1枚のプリント基板に集積回路とスイッチをはじめとしたキー入力部品、コネクタなどが実装されることが増えています。キー入力部品やコネクタなどは物理的に押したり、配線を抜き差したりするため、プリント基板に大きな負担がかかる部分。それが原因で実装部品の損傷や剥離につながる可能性もあるため、事前にひずみゲージを使ってプリント基板の強度・ひずみを検査することが大切です。
電気機器業界携帯電話の落下試験
衝撃に対する強度を検査するために、試験体(この場合は携帯電話)を落下させ、その際に発生する加速度およびひずみを計測し、製品設計にフィードバックします。キーエンスのマルチ入力データロガーNRシリーズはひずみのほか、加速度計測ユニットを組み合わせることで加速度も同時に計測可能です。計測データは波形表示と同時にパソコンに取り込み保存します。またCSV形式で保存すればExcelでデータを確認することができます。試験の効率化に有効です。
※Excelは、米国Microsoft社の、米国およびその他の国における登録商標または商標です。
生産現場系用途
金属・鉄鋼業界プレスの荷重計測
プレス加工は自動車をはじめ、電気機器や金属・鉄鋼などで活用されています。プレスラインの加工や各種材料の曲げ加工、金属材料のせん断など、さまざまな加工に利用され、加圧能力が数万キロ・ニュートンという大型機械も珍しくありません。プレス加工を行う工作機械には機械式や油圧式などがありますが、発生する力を正しく計測し、制御することが製品の均一化・高精度化には重要。そこで荷重計測が必要です。ひずみ計測ユニットはひずみゲージ式ロードセルを直接接続することができ、簡単に荷重計測が可能です。
金属・鉄鋼業界ダイカストマシン金型ひずみ計測
ダイカストマシンの寸法精度は金型に依存する割合が高く、製品品質の安定化には金型のひずみ計測が欠かせません。キーエンスのマルチ入力データロガーNRシリーズであれば、ひずみのほかに温度も同時記録が可能です。これにより熱分布のばらつきやひずみを高精度に計測でき、成形不良や金型にひずみが発生する要因を総合的に判断し、特定することができます。
ひずみ計測データの収集にはキーエンスのデータロガー
クラス最小・最軽量の本体に、さまざまな評価・解析機能を盛り込んだマルチ入力データロガー「NRシリーズ」は、ひずみ計測ユニット「NR-ST04」を組み合わせることでさまざまなひずみ計測に対応。コンパクトボディでモバイル性が高く、専用ソフトでかんたん設定・解析を実現しています。徹底的に使いやすさにこだわったマルチ入力データロガーで、計測ユニットを増設すればアナログ計測や温度、加速度など1台で7役をこなします。
ひずみ計測ユニット「NR-ST04」は、従来機よりも本体がコンパクトになり、ブリッジ回路を内蔵し、1~4ゲージ法すべてに対応。上級機を凌ぐ性能を約230gというコンパクトボディに凝縮しています。