「ひずみ」とは?
ひずみ計測の「ひずみ」について、ポアソン比や応力を交えて紹介しています。
ひずみとは?
製品強度や構造を検討するときに必ず話題に上がるのがこの「ひずみ」(ε)です。
ひずみの単位
ひずみは伸び(縮み)を比率で表したものなので単位はありません。つまり“無名数”扱いです。しかし、『この数値はひずみですよ』ということを知らせるために○○ST(strainの略)や○○ε(ひずみは一般にギリシャ文字のεで表すため)をつけます。(%やppmと同じ考え方です。)また、ひずみは小さな値を示すのでμ(マイクロ 1×10-6)をつけてマイクロひずみ(μST、με)を表されます。
ポアソン比と応力
棒を引っ張ると伸びるとともに径も細くなります。伸びる(縮む)方向を“縦ひずみ”、径方向(=外力と直交方向)の変化を"横ひずみ"(εh)といいます。
1) 縦ひずみは物体が伸び(縮み)する方向の比率
2) 横ひずみは径方向の変化の比率
縦ひずみと横ひずみの比を「ポアソン比」といい、一般的な金属材料では0.3付近になります。
ν=|εh/ε|...(3式)
では引っ張られた棒の中ではどんな力が作用しているのでしょうか。引っ張られた棒の中では元の形に戻そうとする力(力の大きさは引っ張る力と同じ)が働いています。この力が働いているので、引っ張るのをやめると棒は元に戻るのです。
この反発する力を断面積で割った値(単位面積当たりを換算した値)を"応力"(σ)といいます。外から引っ張る力をP(N)、断面積をa(m2)としたときの応力は
ひずみに方向(符号)はある?
ひずみにも方向があり、伸びたか縮んだかの方向を表すのにプラス/マイナスの符号をつけて表します。
引っ張り(伸び):プラス 圧縮(縮む):マイナス
応力とひずみの関係
ひずみと応力関係は実験的に求められています。
金属の棒を例にとると、軽く曲げた程度では、棒は元のまっすぐな状態に戻りますが、強く曲げると曲がったまま戻らなくなります。この、元の状態まで戻ることのできる曲げ量(ひずみ量)が弾性域、それ以上を塑性域と言い、弾性域は応力とひずみが直線的な関係にあり、これを「ヤング率」とか「縦弾性係数」と言い、通常「E」で表わします。
ヤング率(縦弾性係数)がわかればひずみ量から応力を計算することが可能です。
σ=(材料によって決まった定数 E)×ε...(5式)
ひずみ量から応力=かかった力を求めてみましょう。
図の鋼棒を引っ張ったときに、485μSTのひずみが測定されたとして、応力を求めてみましょう。
条件:SS400のヤング率(縦弾性係数)E=206GPa 1Pa=1N/m2
(5式)より、
σ=E×ε=206GPa×485μST=(206×109)×(485×10-6)=99.9MPa
(4式)より、
P=σ×a=99.9MPa×(0.01m×0.01m)=(99.9×106)×(1×10-4)=9.99kN
=約10トン
約10トンの荷重で引っ張ったと考えられます。
ひずみゲージ
ひずみゲージは金属が伸び縮みすると抵抗値が変化するという原理を応用しています。
元の抵抗値をR(σ)抵抗の変化量を⊿R(σ)ひずみ量をεとしたときこの原理は以下のようになります。
⊿R/R=比例定数K×ε...(6式)
比例定数Kを“ゲージ率”と言い、ひずみゲージに用いる金属(合金)によって決まっています。また無負荷のとき、ひずみゲージの抵抗は120σが一般的です。通常のひずみ測定では抵抗値の変化は大きくても数σなので感度よくひずみを測定するには工夫が必要です。
ひずみの単位
ひずみ量から応力=かかった力を求めてみましょう。ひずみ量は485μST、ひずみゲージの抵抗値を120σゲージ率を2.00として計算します(6式)より、
⊿R=2.00×485μST×120σ=0.1164σ
なんと、わずか0.1164σしか変化しません。その位、微妙な変化なのです。