溶着
レーザー加工の事例から見る「溶着」についてご説明します。
従来工法の課題
接着剤による接合
ディスペンサにて接着剤を塗布して接着します。イニシャルの装置コストは安価ですが、下記のようなデメリットもあります。
- ランニングコストがかかる
- 塗布量の管理がシビアで接着不良のリスクがある
- 硬化時間が必要なため、サイクルタイムが長い
超音波溶着
ワークを加圧しながら超音波振動させ、摩擦熱により接合します。サイクルタイムは短いですが、下記のようなデメリットもあります。
- 振動による製品ダメージのリスクがある
- 品種ごとに専用ホーンが必要
- バリ、粉塵が出やすい
熱板溶着
加熱した鉄板によってワークを直接加熱し、加熱直後に圧力を加えて接合します。大型のワークにも対応できますが、下記のようなデメリットもあります。
- サイクルタイムが長い
- バリや糸引きが発生する
- 小型ワークには使用できない
新工法「レーザー溶着」
仕組み
レーザー光を照射することで、対象物の樹脂を溶着させる技術です。レーザー透過樹脂側から照射したレーザー光が、吸収樹脂を溶融。加圧・密着されていることにより透過樹脂も溶融し溶着されます。
溶着のフロー
-
「透明体には反応しない」レーザー光の特性を利用して、透明樹脂と有色(吸収)樹脂を準備します。
-
2つの樹脂同士を治具などで加圧しながらレーザー照射。有色(吸収)樹脂側で発生した熱により2つの樹脂が融解します。
-
その後、レーザー照射箇所が冷え固まることで、2つの樹脂が溶着されます。
レーザー溶着のメリット
低ランニングコスト | 製品ダメージ低減 |
製品ごとの型が不要 | 高い機密性 |
レーザー溶着には図のようなメリットから、小型化・薄型化が進む電子部品を中心に導入が進んでおります。
レーザー溶着のポイント
溶着可能な樹脂の組み合わせ
対象物の材質により、レーザー光の透過率は大きく異なります。
以下がレーザー溶着が可能な材質の組み合わせとなります。
PMMA |
---|
ABS |
PA |
PE |
PET |
PC |
PVC |
PP |
POM |
PS |
PBT |
PPS |
PEEK |
PMMA アクリル |
ABS | PA ナイロン |
PE ポリエチレン |
PET ポリエチレン テレフタラート |
PC ポリカー ボネート |
PVC ポリ塩化ビニル |
PP ポリプロ ピレン |
POM ポリアセ タール |
PS ポリスチレン |
PBT ポリエチレン テレフタラート |
PPS ポリフェニレン サルファイド |
PEEK | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
PMMA | ○ | ||||||||||||
ABS | ○ | ○ | |||||||||||
PA | ○ | ||||||||||||
PE | ○ | ||||||||||||
PET | ○ | ○ | |||||||||||
PC | ○ | ○ | ○ | ||||||||||
PVC | ○ | ○ | ○ | ||||||||||
PP | ○ | ○ | ○ | ||||||||||
POM | ○ | ○ | |||||||||||
PS | ○ | ||||||||||||
PBT | ○ | ○ | |||||||||||
PPS | ○ | ||||||||||||
PEEK | ○ |
レーザー光の波長によって異なる各材質への透過率
下のグラフは基本波レーザーとグリーンレーザーの樹脂の材質別透過率を示したグラフです。波長によって透過率が異なるため、溶着の結果も大きく変わります。キーエンスではこの2つの波長帯どちらもラインナップがあり、双方のタイプで溶着テストを行うことが可能です。
高い加工品質を実現する機能
スポット可変機能
レーザー光のスポット径を自在にコントロールできます。製品の溶着幅に合わせて、最適な溶着が可能です。
高精度ワイドエリア
- エリア全域で文字線幅が均一・高精度
330×330mmのワイドエリアを高精度に加工(MD-Xシリーズの場合)。さらに、スポット可変機能により、加工エリアの変形、ひずみ、スポットのバラつきを解消します。
ファインダ機能
内蔵カメラによって位置合わせ・加工結果の確認が可能です。レーザー同軸撮影のため、位置ズレなく高精度に確認ができます。
サーモパイル式パワーモニタ内蔵
ヘッド内部に搭載されたパワーモニタによりレーザー出力を測定&補正が可能です。常に安定した品質を実現します。
導入までのフロー
仕様の確認
弊社営業担当より、お客様の溶着ごテーマの仕様を確認させていただきます。仕様にあわせて最適なレーザー機種をご選定いたします。
- 材質の種類
- 材質の厚み
- 溶着の加工タクト など
ワークをお預かりして溶着テスト
お客様の仕様にあわせた最適なレーザー機種で、お預かりしたサンプルワークで溶着テストを実施します。キーエンスでは3Dプリンタを保有しており、溶着専用治具も弊社で用意し、テストを行うことが可能です。(図は治具制作例)
テスト結果のご確認採用可否
溶着テストをおこなったサンプルワークをお客様へご返送します。お客様のお求めの仕様を満たしているかご確認いただき、具体的な導入可否のご判断をいただきます。
- 溶着強度
- 密閉性
- 加工箇所の品質 など
導入事例
- スイッチ
- タッチパネルカバー
- 自動車用キースイッチ筐体
- カートリッジ
- ヘッドランプ
- 各種センサ