メディカル業界におけるUDI
メディカル業界におけるダイレクトマーキングの必要性について解説します。
UDIについて
UDIとは
UDIとは、機器固有識別(Unique Device Identification)の略です。医療機器を固有に識別することで、流通過程を含めた医療安全の向上、最適な治療の提供を促進する運用体系のことです。 2013年12月に国際医療機器規制当局フォーラム(IMDRF)が、国際整合性のとれたUDIを採用するようにUDIガイダンスを発行しています。 現在は米国のみ義務化となっていますが、各国でUDIへの対応が進んでいます。
米国UDI規制
米国では2013年9月に公布され、2014年9月より段階的に義務化が始まっています。その他の国でも、米国向け医療機器に対して、下記期日に沿ってUDI対応を実施しています。
クラス分類 | 付帯条件 | ラベル表示 データベース登録 |
本体表示 |
---|---|---|---|
クラスIIIおよびPHA(公衆衛生法) ライセンス品 |
生命維持・延命装置 | 2014/09/24 | 2015/09/24 |
生命維持・延命装置以外 | 2016/09/24 | ||
クラスII、クラスIおよび未分類 | 埋め込み機器 | 2015/09/24 | 運用なし |
生命維持・延命装置 | 2015/09/24 | ||
クラスII(*) | 上記以外 | 2016/09/24 | 2018/09/24 |
クラスI(*)および未分類 | 2020/09/24 | 2022/09/24 |
- (*) レーザーマーキングが用いられる代表的な製品
- 【クラスI】下記装置の関連部品、鋼製小物
- 【クラスII】内視鏡、X線診断装置、超音波画像診断装置
- 参考:GS1ヘルスケアジャパン協議会「医療機器などへのダイレクトマーキング運用ガイド」
ダイレクトマーキングの必要性
鋼製器具や内視鏡などをはじめとした医療器具は小型で精密なものが大半で、かつ洗浄や滅菌工程を経て繰り返し使用されるため、紙やフィルムのような通常の表示ラベルでは貼り付けスペースや長期間の耐久性が問題となるケースが多いです。
また、手術中に表示ラベルが剥がれ落たり、患者の体内に表示ラベルが異物として残留するなど、医療行為として決してあってはならないリスクも存
在します。
このような背景から、ダイレクトマーキングの導入・運用体制を整える必要性が高まっています。
導入効果
ダイレクトマーキングによって医療機器を管理することで、以下のようなメリットがあります。
- 使用頻度を把握することでの品質維持
- 交換・発注タイミングの最適化
- 器具のセット組みの効率化と標準化
- 器具の各工程把握(ロケーション管理)
- 過剰在庫の防止
- 紛失/盗難分析 など
レーザーマーキングについて
どのようなマーキングが必要か?
医療器具のダイレクトマーキングには以下のGS1コードが用いられます。
- GS1-128
- GS1 Data Matrix(GS1-128の面積が確保できない場合)
表示項目としては、以下の情報をコードに付与する必要があります。
- 01:GTIN(製品コード)/10:ロット番号/17:有効期限日
- 21:シリアル番号/11:製造年月日
2ケタの数字はAI(アプリケーション識別子)と呼ばれ、目視可能文字として表す場合は( )で囲うことになっています。
GS1 標準で定められている医療機器などヘルスケア製品へのダイレクトマーキングの表示サイズは次の表のとおりです。
印字方法(※) | モジュール幅(x) mm / インチ | クワイエットゾーン | ||
---|---|---|---|---|
最小 | 目標 | 最大 | ||
インク式 | 0.254 / 0.0100" | 0.300 / 0.0118" | 0.615 / 0.0242" | 1x, 4辺とも |
A方式:レーザーマーキングなど | 0.100 / 0.0039" | 0.200 / 0.0079" | 0.300 / 0.0118" | 1x, 4辺とも |
B方式:ドットピンマーキングなど | 0.200 / 0.0079" | 0.300 / 0.0118" | 0.495 / 0.0195" | 1x, 4辺とも |
GS1総合仕様書のGS1 system symbol specification table 7より抜粋