お客様導入事例
5社のIJP比較テストを行い現場の意見で採用
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5社のIJPを比較テストした結果、現場の声が決め手となり
キーエンスのインクジェットプリンタを採用
福地製薬株式会社 様事業内容
医薬品、医薬部外品、医療機器、化粧品、食品の製造及び販売
自社ブランド製品主体の製造販売から、OEM生産を強化する経営方針へと舵を切った福地製薬株式会社。
同社は、新規顧客の要求に対応するために空調設備をはじめとして、製造装置も新調するなど生産で利益を出せる体制作りを急ピッチで進めている。
そんな中、それまで10年以上使い続けたメーカーから、キーエンスのインクジェットプリンタにスイッチ。産業用インクジェットプリンタの性質上、リスクを伴うメーカーの切替を決断した理由と導入に至った経緯、それによりもたらされた効果を紹介する。
創業安政3年150年の伝統を持つ老舗
福地製薬の歴史は古く、安政3(1856)年にまで遡る。近江の地で福地與兵衛商店として売薬商を始めたのが創業であり、明治時代には31種類の売薬を製造販売するまでに至った。
中でも「首より上の薬」がヒット商品となり、昭和に入ると日本国内だけにとどまらず、アジア諸国にも薬を輸出販売するほど業績を伸張。ただ第二次世界大戦中は一時薬業を休止して福地航空金属株式会社を設立し、製薬工場を航空機部品の製造工場に転換した。
終戦後の昭和22年に医薬品製造業の許可を取得し、昭和26年に福地製薬株式会社に社名を変更、医薬品に加えて医療機器や化粧品製造までを手がける企業となった。
業容は順調に拡大し「首より上の薬」のほかあらゆるジャンルの薬を製造。錠剤やカプセル、液剤、軟膏、クリームなど展開アイテム数は、最大で200を超えるまでに増加した。
首より上の薬
「昭和の時代はコフジスブランドを主力商品として、全国の薬局、薬店に直接販売していました。やがて薬の販売チャネルがドラッグストアに移行していくにつれて、当社の取引相手も変化していきました」と、取締役総務部長の福地啓恭氏は歴史を振り返る。
ドラッグストアは、企業間の吸収・合併など動きが激しい業界。その余波を受けて、取引先が業界大手に吸収されるなど福地製薬の経営環境も大きく変化していった。
取締役総務部長 福地啓恭氏
OEM生産へと方向転換、生産体制を大幅に変更
「ドラッグチェーン相手のビジネスは、どうしても価格競争となりがちです。厳しさを増す一方の状況を打開するために、OEM生産の受託へと経営方針の一大転換を図りました」と福地氏。
とはいえOEM生産を受注するのは容易ではない。そもそも医薬品製造については、GMP基準(Good Manufacturing Practice:医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準)に適合した試験体制と設備を整えることが必須条件であり、原材料入荷から最終製品の試験に至る製造工程全般において厳しい品質管理が求められる。その上で、発注元となる企業が定める様々な要件をクリアしなければならない。求められる条件を満たす体制に加えて、製剤課課長の合田篤史氏は「当社の強みは機動力です」と語る。
一昨年4月に大手メーカーから打診を受けたOEM生産の案件では、翌年4月からの販売対応が絶対条件となっていた。相当な規模に達する予定発注量をこなすには、新たな製造機器の導入が必要であり、通常なら2年ぐらいの準備期間をかける案件だった。
「この件で必要な設備投資について、当社の経営陣は驚くほど迅速な決断を下しました。これが社内に熱を生み出し、全従業員が一丸となって取り組んだ結果、予定通りに生産を開始できました。このスピード感はクライアントからも高く評価されています」と合田氏。その新たな生産ラインに導入されたのが、キーエンスのインクジェットプリンタだった。
製剤課課長 合田篤史氏
5社の比較テストを行い現場の意見で採用
福地製薬のラインでは当時、合計8台の産業用インクジェットプリンタを使用。いずれも同一メーカーの製品で、導入から10年以上を経過し入れ替え時期を迎えていた。産業用インクジェットプリンタは、消耗品の統一やメンテナンス性、万が一のトラブルなどを考慮すると、ほとんどが使い慣れた同じメーカーの新型機導入となるところだが、今回はあえて、既存のプリンタメーカーを含む5社の製品をテストした。
デモ機による比較テストの狙いを合田氏は「当時のIJPは2世代前の機種ですから、新型機の使い勝手は各社ともにかなり良くなっているはずです。そこで現場のスタッフに試してもらい、最も使いやすい機種を導入することにしました」と説明する。
デモ機を実際に生産ラインに設置して、実際の運用でしばらく使ってみて、最も高い評価を得たのがキーエンスの『MKU6000シリーズ』だった。高評価の理由を、テストを担当された包装課主任の青木氏は、次のように話す。
「ひと言でいえば、実際に作業に当たる私たち女性にとって、もっとも優しいプリンタだったからです。タッチパネルで手順を確認しながら操作できるので、専門知識のない女性スタッフでも簡単に使えます。しかも、プリントヘッドの洗浄作業が自動で行なわれる
ため、手を汚すことが一切なくなったのも、現場スタッフの多くを占める女性にとって好感度の高い評価ポイントです」
簡単に操作できるインターフェースの
タッチパネル
包装課主任 青木美穂子氏
必要最小限のメンテナンスでありながら圧倒的に安定した印字品質
従来使用していたプリンタの問題点は、不安定な印字品質にあった。薬のパッケージを2万個ほど印字するたびに、50個ぐらいのドット飛びや欠けなどの不良品が出ていたのだ。この問題は、ラインで生産にあたるスタッフに、いつ印字ミスが起きるかわからないという精神的な負担にもなっていた。
「特に季節が変わるタイミングでは、気温や湿度など周囲の環境の変化なのか、印字不良の発生率が上がるため、とにかく気を使いました。キーエンスのIJPに入れ替えてからは、印字不良は起こっていません。もちろん確認作業を怠ることはありませんが、以前ほどの気遣いは不要です」と、青木氏は気持ちにゆとりの出た現状を語る。
産業用インクジェットプリンタでありがちな印字不良を引き起こす要因は、インク粒子の状態不良やプリントヘッドの汚れにある。印字に最適なインク粒の状態は、周囲の環境温度やインクの濃さなどによって常に変動する。そこで福地製薬では従来、専門スタッフがルーペで粒子の状態を見ながら調節していた。
この作業には職人技ともいうべき技術と経験が必要で、誰もがこなせる業務ではない。キーエンスのインクジェットプリンタでは、インク粒子を常時1秒間に10回の高速センシングすることで、常に最適な粒子状態を保つように自動調整してくれる。
「終業後、ラインを止めてから行う毎日の洗浄作業も、手が汚れるので女性には嬉しくない作業です。ところがキーエンスのインクジェットプリンタは、ボタンひと押しで自動洗浄してくれるので、まったく手間がかかりません。しかも経路洗浄だけでなく、ノズル、電極板など印字品質を保つために必要な部品をすべて洗浄してくれます。これまで1年以上使ってきた結果、毎日洗浄する必要がないこともわかりました。これは予想外のうれしい発見です」と、日野工場係長麻生田学氏はメンテナンス性の良さを高く評価する。
日野工場係長 麻生田学氏
効率よく、しっかり洗える
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オートシャワー洗浄
従来の自動洗浄はインク経路を補充液で洗うだけでした。
キーエンスのインクジェットプリンタに新搭載されたオートシャワー洗浄では従来の経路洗浄に加え、ノズル・電極板・ガターといった印字品質を保つために必要な部品すべてを綺麗に洗い流します。 -
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従来の手動洗浄
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ワンタッチで高圧洗浄する
オートシャワー
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“暑い寒い”による印字乱れを解消
インク粒子化自動最適化
印字に最適なインク粒の状態は周囲の環境温度やインクの濃さによって変動します。キーエンスのインクジェットプリンタは常時1秒間に10回インク粒子のセンシングを行い、常に最適な状態を保ちます。
周囲の環境に左右されることなく、いつでも綺麗な印字を実現させます。
インク粒子いつでも最適な状態を保つ
OEMラインでの生産性向上に貢献
福地製薬では長年に渡り、産業用インクジェットプリンタはすべて同じ会社の製品を使用してきた。そこに別会社の製品を導入するとなると、通常はさまざまな問題が出てくる。新しい機械が良いことはわかるが、これまで慣れ親しんだ使い勝手の良さを犠牲にしたくない、と現場が抵抗するからだ。今回の入れ替えに際しても、当然そうした声が出ることも予想された。だからこそ、操作性に関する事前テストを徹底したのである。
OEM生産の比率を高めている福地製薬では、生産ラインの段取り替えも先方都合に合わせる必要がある。取材当日も、急きょ機密性の高い商品の生産が入ってしまったため、残念ながら現場への立ち入り、写真の撮影許可を得られなかったほどである。
そのためラインを変えるたびに必要となる産業用インクジェットプリンタの設定変更を、いちいち専門スタッフが時間をかけて調整していたのでは生産効率は高まらない。
キーエンスのインクジェットプリンタで印字した製品
「その点、キーエンスのインクジェットプリンタは本体からタッチパネルを取り外して、状況を確認しながら設定できます。従来のIJPで最も面倒だったライン条件などの入力も、ラインイメージがわかりやすくパネル上に表示されるので、それを見ながら入力できます。誰もが簡単に使える点は、とてもありがたいです」と青木氏。
福地製薬は今後、OEM生産の比率をさらに高めていく計画。その際に経営上の課題となるのが、確実に収益を出せる生産体制を整備することだ。この課題をクリアする観点から合田氏は、次のようにまとめてくれた。
「今回あえて以前から取引のあるメーカーではなく、キーエンスさんのIJPを導入した理由は、何より現場スタッフの反応が良かったからです。これまで慣れ親しんだ操作性を犠牲にしても、導入するだけのメリットが十分にありました。とにかく女性スタッフの評価が高いのです。たとえばインク補充がカートリッジ式で有機溶剤のニオイを嗅ぐこともなく、洗浄で手が汚れることもありません。これなどは些細なことかもしれませんが、女性スタッフが心地よく働ける環境は、結果的に生産効率向上につながると考えています。旧型のIJPで必要だった、毎日の洗浄や専門スタッフによるきめ細かな調整などにかかる手間をコスト換算すれば、ランニングコストを含むトータルでのコストパフォーマンスは十分に高いと評価しています」
導入してからキーエンスのインクジェットプリンタのことで、麻生田氏が現場から呼ばれることはほとんどないとのことだ。