食品業界

カップ麺(インスタントカップ麺)の容器

カップ麺(インスタントカップ麺)の容器は、一般的に断熱性の高い発泡スチロールが使われています。また近年は、製造工程での温室効果ガス排出量が少なく、エコロジーな容器素材として「紙」にも注目が集まっています。こちらでは、カップ麺容器を検査するうえで覚えておきたい製造の基礎知識、よく起こる不良の種類と発生原因、従来の検査方法と最新画像処理システムを活用した検査事例をご紹介します。

製造の概要・基本

カップ麺容器の材料について

インスタントラーメンの容器・包装は、ポリエチレン・ポリプロピレン・ポリスチレンなどの合成樹脂が主な材料です。使用できる材料は、食の安全を守るために法律で規制されています。規制では、材質試験や溶出試験などに加え、合成樹脂の添加物についても触れています。

また、カップ麺の容器については、JAS規格(日本農林規格等に関する法律)で、破損または変形などにより熱湯などの内容物がこぼれないことと規定しています。カップ麺の容器は、JAS規格の条件を満たし、なおかつ熱湯が入った容器を手で持てる食器としての「断熱性」が求められます。

そこで従来からポリスチレン合成樹脂を原材料に耐熱性・断熱性を高めた「耐熱PSP(耐熱ポリスチレン)」の容器が用いられてきました。いわゆる「発泡スチロール」の容器です。そのほか一部プラスチック製の容器、エコロジーな素材として紙なども使用されています。

耐熱PSP容器の製造工程について

最も一般的な「耐熱PSP(耐熱ポリスチレン)」の製造工程を説明します。まずPSP(発泡ポリスチレン)シートを熱で柔らかくし、目的の形状に金型で成形して個別にカットします。カップ麺容器の場合は、耐熱性が求められることから表面にポリ塩化ビニルやポリプロピレンなどのシートを貼ることで耐熱性・耐衝撃性を強化しています。

耐熱PSP容器の製造工程について
A:PSPシート B:加熱 C:金型成形 D:カット

よく起こる不良の種類と発生要因

食品の容器製造でよく起こる不良の種類とその発生原因について説明します。容器成型中の温度変化や異物混入・衝撃で起こる不良のほか、パッケージの印刷不良などを確認します。

焦げ・焼け

耐熱PSP(耐熱ポリスチレン)に限らず、合成樹脂で発生しやすい不良が「焦げ・焼け」です。合成樹脂は、限度を超える温度に加熱すると変色し、さらに温度を加えると黒くなります。

焦げ・焼け

破れ・凹み

PSP(発泡ポリスチレン)は、やわらかい素材なので衝撃が加わると凹んだり、破れて穴があいたりします。破れ・凹みを防ぐには、金型への異物混入を監視したり、搬送時に衝撃が加わらないようにしたりすることが大切です。

破れ・凹み

汚れ・キズ・異物・黒点(コンタミ)

異物・黒点(コンタミ)
A:異物・黒点(コンタミ)

ホコリやゴミの侵入によって起こるキズや汚れ、金型などに蓄積した劣化物・異物が製品内に侵入して起こる異物・黒点(コンタミ)なども代表的な不良です。これらのトラブルは、ホコリやゴミの侵入を防ぎ、金型をこまめに清掃することで予防できます。

印刷ミス

容器表面には、パッケージ印刷を行いますが、印刷ミスや位置ずれなどが発生する恐れがあります。商品変更や段取り替えの際に検査を行うことが大切です。また、画像センサ+OCR(文字認識)などを活用すれば、印刷の文字などの文字認識を自動化でき効率的です。

印刷ミス

従来の検査方法

「焦げ・焼け」「破れ・凹み」「汚れ・キズ・コンタミ(黒点)」「印刷ミス」などの微細な変化は、カメラで捉えることが難しく目視検査に頼らざるを得ない工程でした。特にカップ麺の容器は円筒状のため、反射が発生しやすく画像検査が困難です。しかし近年では、画像処理システムやセンサ類の進歩により、検査の自動化が可能になっています。

従来の検査方法

最新画像処理システム検査事例

最新画像処理システム検査事例
容器の内側面と底面に小さな異物があります。
従来の二値化処理では異物と容器内の暗い部分の明るさが近いため検出不可能です。
傷検査モードなら濃淡差は無視して、異物のみを安定して検出可能です。

従来の画像処理方式では、つなぎ目などが検査の邪魔になり、検査領域から除外していました。そのため複雑な設定が必要で、処理に時間がかかり生産性低下につながっていました。画像処理システム「CV-Xシリーズ」「XG-Xシリーズ」のリアルタイム差分フィルタを使用すれば、検査対象の位置ずれに影響受けることなく汚れだけを抽出可能です。マスク処理を行わないので、つなぎ目付近の外観検査もできます。「CV-Xシリーズ」「XG-Xシリーズ」は、微細な汚れ・キズなどの検出に適した「傷検査モード」を搭載しており、従来の二値化処理では検出不可能だった汚れ・傷なども安定して検出できます。

まとめ

このページでは、カップ麺容器の材料や製造法について説明しました。また、製造時に発生するトラブルと外観検査の方法についても紹介しました。それらをまとめると、以下の通りです。

  • 不良の原因には、成型中の温度変化や異物混入・衝撃の他、パッケージの印刷不良などがある。
  • JAS規格で破損や変形で熱湯などがこぼれないように製造することが規定されている。
  • カップ麺の容器は円筒状のため、反射が発生しやすく画像検査が困難だったが、近年、技術の進歩で自動化が可能になっている。

ワークによって、外観検査の方法もさまざまです。最適な外観検査を行うには、それらの特徴を知り、正しく検査することが大切です。
このページで紹介した内容や、他のページに記載している外観検査の知識を1冊にまとめた資料「外観検査のすべて」は、下記からダウンロードできます。画像処理システムの導入事例集とあわせてご覧ください。

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