ゼリーの賞味期限
ゼリーに限らず、食品や医薬品には賞味期限(消費期限)や製造年月日、ロットナンバー等が印字されています。その目的は、「法律に則した表記をするため」「自社製品の管理のため」「物流ルートで判別するため」などさまざまです。こちらでは、外観検査を行ううえで覚えておくべき賞味期限(消費期限)の基礎知識、印字不良の種類や発生要因、従来の検査方法と最新画像処理システムを活用した検査事例をご紹介します。
賞味期限(消費期限)の概要・基本
賞味期限(消費期限)を印字する意味・目的
賞味期限(消費期限)の印字は、消費者にとっては商品の鮮度を判断する基準となり、メーカーにとっては責任の期限を明確にするという意味があります。賞味期限(消費期限)は、消費者にわかりやすく伝える必要があるので、印字の際には年月日を数字で記載します。
賞味期限(消費期限)以外の印字について
賞味期限(消費期限)のほかにも「製造所固有記号」「ロットナンバー」「シリアルナンバー」などの記号・英数字もパッケージに印字されます。そのほかに工程管理用の記号・バーコード、自社ブランドを保護する模造品防止用の識別記号・番号などをパッケージに印字する場合もあります。
製造所固有記号
食品表示法では、「製造所の所在地及び製造者の氏名又は名称」の表示を義務付けています。同一の製品を2ヵ所以上で製造している場合は、消費者庁に届け出た製造所固有記号の表示に変更することが可能です。
ロットナンバー・シリアルナンバー
商品の品質維持・管理するために「いつ、どこで作られたものなのか」を明確にする記号がロットナンバー(ロット番号)・シリアルナンバー(シリアル番号)です。万が一、不良品が流出してしまった場合に市場回収量を最小限に留めたり、不良の原因を追究したりするトレーサビリティの観点からもロットナンバー・シリアルナンバーは重要です。
印字方法
印字方法は、「接触マーキング」と「非接触マーキング」に分けることができます。以下に一般的な印字方法をまとめてみました。
接触マーキング
- 手書き
- ペンなどでマーキングを行う最も簡単な方法です。特別な設備が不要なので、少量生産ではコストもかからず有効ですが、人が記載するので書き間違えが発生する可能性があります。
- スタンプ
- インクを使って印字する方法です。手書きに比べて記入間違えが抑えられますが、インクの付着量や押し圧によって文字が潰れたり、文字がかすれたりすることがあります。
- サーマルプリンタ
- サーマルヘッドと呼ばれる印字ブロックに組み込まれた発熱素子を加熱することで印字する方式です。文字品質は比較的綺麗ですが、印字面が平面である必要があります。
- ラベル
- プリンタなどで印刷したラベルを製品に貼り付ける方法です。プリンタで印刷するので綺麗に印字できますが、生産量が増えればラベルやインクなどのコストがかかり、ラベルを印刷して貼る手間も増えます。また、ラベルが剥がれる危険性もあります。
- 刻印
- 製品表面を凹ませて印字する方法です。手書きやスタンプのように消えたり、ラベルのように剥がれたりする心配がありません。
非接触マーキング
- インクジェットプリンタ
- 製品にインクを吹き付けて印字する方法です。曲面や柔らかいものにも対応し、高速でラインを流れている製品に印字できるといった特徴があります。印字履歴の保存も可能です。
- レーザマーカ
- レーザ光を照射して印字する方法です。インクのように消える心配がなく、確実に賞味期限などを印字できます。また、インクやラベルなどの消耗品が不要で、メンテナンスの頻度も少なく手間がかからないことも大きなメリットです。
よく起こる不良の種類と発生要因
食品のパッケージによく起こる不良の種類と発生要因について説明します。食品・医薬品では賞味期限(消費期限)の印字が義務付けられており、消費者の安全を守るうえでも印字ミスは許されません。もし印字に不良があれば、信用問題にもつながります。
印字ズレ
賞味期限(消費期限)は、所定の位置に印字する必要がありますが、印字するときにワークの位置ズレがあったり、インクジェットプリンタやレーザマーカにトラブルがあったりすると印字場所がズレてしまうことがあります。印字ズレは、目視のほか画像処理システムなどで検査できます。
印字間違い
賞味期限(消費期限)の日付は、生産日・製品ごとに異なるため、インクジェットプリンタやレーザマーカの設定により印字間違いが起こる可能性があります。生産する製品を切り替えるとき、段取り替えを行うときに印字の確認を行うことはもちろん、全数検査を行うことが大切です。
フタの破れ・パッケージの傷・汚れ
印字とは少し異なりますが、外観検査としてパッケージ・フタなどの破れ・破損、傷や汚れの確認も行います。大量生産の場合は、目視ですべて確認することが困難なため、近年は画像処理システムなどの導入が進んでいます。
異品種混入
多品種を製造するラインでは、異品種混入にも気を配る必要があります。類似品などはパッケージが似ているので、目視検査ではミスが発生する可能性があります。ロットナンバー・シリアルナンバー、工程管理用の記号・バーコードなどを読み取り、製品を判別すれば確実です。
従来の検査方法
賞味期限(消費期限)の確認は、これまで目視検査が中心でした。しかし、賞味期限(消費期限)のような記号・文字列は、「O(オー)」と「0(ゼロ)」、「1(イチ)」と「I(アイ)」などが紛らわしく、人間の目では間違いが発生しやすいという問題点があります。また、全数検査ではヒューマンエラーが発生する可能性があります。OCR(Optical Character Recognition/Reader、オーシーアール、光学的文字認識)対応のハンディターミナルを利用すれば、賞味期限(消費期限)を読み取ることも可能ですが、オフラインで人間が作業するので手間がかかります。そこで近年は、画像処理システムを活用した自動化に注目が集まっています。
最新画像処理システム検査事例
近年は、OCR(Optical Character Recognition/Reader、オーシーアール、光学的文字認識)技術と画像処理システムを活用することで、インラインで賞味期限(消費期限)などの印字検査が可能になりました。印字の位置ズレや打ち間違い、文字の欠損などの印字不良、さらにバーコードや2次元コードの読み取り、パッケージの破れ・汚れなどの外観検査を同時に実施することができます。
OCRに対応したキーエンスの画像処理システム「CV-Xシリーズ」「XG-Xシリーズ」なら、高速でラインを流れる製品の印字検査を自動化できます。また、画像処理システム専用データベース「Vision Database」を利用することで、長期にわたり検査データと画像データを保存可能。保存したデータは日付から検索できるので、トレーサビリティとしても有効です。賞味期限がきれるまでの画像検査データを保存しておけば、万が一の不良品流出時にも安心です。
まとめ
このページでは、食品や医薬品の賞味期限(消費期限)、製造年月日、ロットナンバーなどの意味と印字方法について説明しました。また、印字や製造時に発生するトラブルと外観検査の方法についても紹介しました。それらをまとめると、以下の通りです。
- 賞味期限は消費者に鮮度を示すものであり、印字の不良は信用問題につながる。
- 目視検査によるヒューマンエラーの対策として、カメラを使用した自動化が注目されている。
- キーエンスの画像処理システムなら、印字・パッケージ不良から各種コードの読み取りまで、1度にインライン検査できる。
ワークによって、外観検査の方法もさまざまです。最適な外観検査を行うには、それらの特徴を知り、正しく検査することが大切です。
このページで紹介した内容や、他のページに記載している外観検査の知識を1冊にまとめた資料「外観検査のすべて」は、下記からダウンロードできます。画像処理システムの導入事例集とあわせてご覧ください。