ガラスの割れ、欠け(クラック)
ガラスの割れ、欠け(クラック)の検査について説明します。こちらでは、ガラスの外観検査するうえで覚えておくべき基本的な知識、よく起こる不良の種類や発生原因、従来の検査方法と最新画像処理システムを活用した検査事例を紹介します。
製造の概要・基本
ガラスについて
窓やコップ、液晶画面などさまざまな場所で利用されているガラスは、「ASTMインターナショナル (ASTM International)」で「結晶を析出することなく、溶体が冷却されて固化した無機質」と定義されています。主成分はケイ酸(SiO2)で、透明で成形しやすいことが特徴です。また、原材料によって「ソーダ石灰ガラス」「鉛クリスタルガラス」「ホウケイ酸ガラス」などに分類されます。
ガラスの製造方法
ガラスは、形状や目的によってさまざまな製造方法が用いられますが、こちらでは一般的な板ガラスの製造方法について説明します。板ガラスの製造では、「フロート法」「ロールアウト法」が一般的で、薄い金属膜で表面を皮膜する際には「スパッタリング法」「化学メッキ法」などが用いられるケースもあります。以下ではガラス製造の基本になる「フロート法」「ロールアウト法」を説明します。
- フロート法
- 溶融した錫(スズ)の上に溶けたガラスを浮かべ、錫(スズ)とガラスの比重差を利用して板ガラスを製造する方法です。溶融した錫(スズ)を溜めた炉(フロートバス)の表面は平行・平面なので、その上に溶けたガラスを流し込んで広げていくことで平坦なガラスが製造できます。フロート法によって製造されたガラスを「フロートガラス」とも呼びます。
- ロールアウト法
- 溶融したガラスを2本のローラー(ロールマシン)の間に通し、圧延しながら板状に成形する方法です。下側のローラーに模様(彫刻)を入れることで連続した模様の入った「型板ガラス」を製造できます。また、ローラー通過時に網を挿入すると「網入りガラス」になります。
よく起こる不良の種類と発生要因
ガラス製造でよく起こる不良の種類とその発生原因について説明します。ガラスは、割れ・欠け(クラック)などが発生しやすく、透明で不良を見逃しやすいので外観検査が非常に重要です。
傷
比較的ガラスは傷に強い素材ですが、搬送中の振動や衝撃などで表面に傷が発生するこがあります。傷が大きくなると割れや欠け(クラック)の原因にもなるので注意が必要です。
汚れ、異物
原材料に不純物・ホコリ・チリなどが残っているとガラス内部に異物が混入する恐れがあります。また、製造工程や搬送時に汚れ・異物・ホコリ・チリが表面に付着することもあります。ホコリ・チリなどは静電気によって付着している可能性もあるので除電が有効です。
気泡(ボイド)
溶解したガラスに不純物が残っていると、成形時にガスが発生して気泡(ボイド)が発生することがあります。
割れ、欠け(クラック)
強い衝撃を受けたり、急激な温度変化が起こったりすると欠け(クラック)が発生します。欠け(クラック)は、衝撃や温度変化で成長し、割れに成長することがあります。また、板ガラスのエッジ部分は比較的衝撃に弱く、割れ・欠け(クラック)が発生しやすいので切断時などは注意が必要です。
従来の検査方法
ガラスは、透明度が高く、光沢があり、製品によって模様が入っていたり、金属皮膜が貼ってあったりするので、カメラやセンサによる割れや欠け(クラック)、傷などの検出が困難です。そのため目視検査に頼らざるを得ないケースが多くありましたが、大きなワークになると検査範囲が広く、手間と時間がかかっていました。また、検査員によってばらつき、作業スピードの差が発生しやすく、検査漏れが発生するリスクも抱えていました。
最新画像処理システム検査事例
- OK画像
- NG画像
キーエンスの画像処理システム「CV-Xシリーズ」「XG-Xシリーズ」は、ワークや検査内容に合わせて最適なカメラ・照明の組み合わせを選べることが特徴です。有効画素6700万画素(8192×8192)の大容量画像を16 倍速、368msで高速伝送できるラインスキャンカメラを採用すれば、搬送中のガラスをインラインで検査することができます。また、2100万画素カメラとトレンドエッジ欠陥モードにより、ガラスの微細な割れや欠陥を発見可能です。従来、目視検査で行っていたガラスの外観検査を自動化できるので生産効率アップに効果的です。
まとめ
このページでは、ガラスの検査に必要な基礎知識や、トラブルと外観検査の方法についても紹介しました。それらをまとめると、以下の通りです。
- ガラスには傷・汚れやボイドなど様々な不良が発生することがある。
- ガラスは、透明度が高く光沢があるため、カメラやセンサによる不良検出が困難。
- 目視検査では、検査員によるばらつきや、検査漏れ、作業スピードの差が課題。
- キーエンスの画像処理システムなら、高画素カメラや高速カメラを使用することで微細な割れや欠陥をインラインで検出可能。
ワークによって、外観検査の方法もさまざまです。最適な外観検査を行うには、それらの特徴を知り、正しく検査することが大切です。
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