RFIDの通信原理
RFIDは、無線通信によってデータの読み書きを行うシステムです。そしてRFIDと言ってもさまざまな通信方式やアクセス方法、読み取り方法があります。そこでこちらでは、RFIDを導入する前に覚えておきたい、通信原理の基礎知識を解説します。
通信方式
RFIDの通信方式は、大きく「電磁誘導方式(誘導電磁界方式)」と「電波方式(放射電磁界方式)」の2種類に分けられます。それぞれの特長についてわかりやすくまとめました。
電磁誘導方式(誘導電磁界方式)
コイル型のアンテナを使い、リーダライタとRFタグの間に磁界を発生させます。その磁界を利用し、データのやりとりを行いますが、同時にリーダライタからRFタグに電力も供給します。そのためバッテリー不要で駆動します。周波数は、135kHz以下の長波帯もしくは13.56MHzの周波数帯で、通信距離は約1mになります。また、人体やコンクリート、木材、プラスチック、ガラス、紙などの非伝導体や水の影響を受けにくく、あらやる環境下で使用できることが特長です。そのほかに小型化しやすいといったメリットもあります。
電波方式(放射電磁界方式)
平板型のアンテナを用いた放射電磁波により、リーダライタとRFタグでデータのやりとりを行い、同時に電力共有を行う通信方式です。電波方式のRFタグは、アクティブタグとパッシブタグにわかれます。周波数は、900MHzのUHF帯もしくは2.45GHzのマイクロ波帯を使用します。通信距離は、900MHzのUHF帯で3~5m、2.45GHzのマイクロ波帯で2mとなります。900MHzのUHF帯は、電磁誘導方式(誘導電磁界方式)と同様に人体やコンクリート、木材、プラスチック、ガラス、紙などの非伝導体や水の影響を受けにくいことが特長です。一方で2.45GHzのマイクロ波帯は、それらの障害物のほか、無線LANやBluetoothなどの影響も受けやすいといった課題があります。
周波数帯
通信方式でも登場しましたが、RFIDでは、主に「LF帯」「HF帯」「UHF帯」「マイクロ波帯」という4種類の周波数が用いられています。こちらでは、それらの周波数帯を解説します。
LF帯
LF(Low Frequency)は、135kHz以下の長波帯です。電磁誘導方式(誘導電磁界方式)の通信方式で使われることの多い周波数帯で、クルマのキーレスエントリーなど、古くから使われている周波数帯になります。通信距離は約1mです。
HF帯
HF帯(High Frequency)は、13.56MHzの周波数帯です。LF帯と同様に電磁誘導方式(誘導電磁界方式)で採用され、通信距離も同様です。その違いは、LF帯に比べて小型化しやすいことです。そのため、交通系ICカードや電子マネーに利用されているNFC(Near Field Communication)の標準規格にも採用されています。
UHF帯
UHF(Ultra High Frequency)帯は、900MHz帯が使用されています。通信方式は、電波方式(放射電磁界方式)となり、通信距離が長いことが特長です。5m前後の距離でも通信が行えるので、在庫管理や検品作業など、RFタグを一括で読み取る必要がある場面で用いられます。
マイクロ波帯
マイクロ波帯は、2.45GHzの周波数帯です。電子レンジやスマホの通信などで用いられている周波数帯のため、電波干渉が起きやすいという問題点があります。また、通信距離も2m前後と短く、あまりRFIDでは普及していない周波数帯となります。
アクセス方法
RFIDのアクセス方法には、「リードオンリー型」「ライトワンス型」「リードライト型」の3種類があります。それぞれの特長やメリット、デメリットを解説します。
リードオンリー型
その名のとおり、読み取り専用になります。RFタグに情報が固定化されているので、後から書き込むことができません。特定の情報とリンクさせることが主な使用目的なので、データの独自性を保てるというメリットがあります。また、RFタグのコストが比較的抑えられるので、主に物流業界ではリードオンリー型のRFIDシステムが採用されています。
ライトワンス型
1度だけデータを書き込むことができ、その後は読み取り専用になるRFタグです。昔のCD-Rをイメージしてもらうとわかりやすいでしょう。基本的な使用方法は、メーカーが工場出荷時に特定情報を書き込むことです。
リードライト型
何回でもデータの書き込みと読み取りができるRFタグです。CD-RWやUSBメモリをイメージしてもらうとわかるやすいでしょう。何度も読み書きができるので利便性が高い反面、コストが少し高い傾向にあります。リードライト型は、主に交通系ICカードなどに用いられています。
読み取り方法
RFタグの読み取り方式には、「タグトークファースト型」と「リーダトークファースト型」の2種類があります。タグトークファースト型が一般的ですが、それぞれの違いについて解説します。
タグトークファースト型
リーダライタからの信号を受信したときに応答し、データを送信する方式です。タグトークファースト型は、RFタグが一定範囲にある場合、一気にデータが送信されて混信してしまう可能性があります。しかし、現在では輻湊制御(アンチコリジョン)により、複数タグの読み取りが可能になっています。
リーダトークファースト型
リーダライタからの送信命令を受信したタイミングでデータを送信する方式です。タグトークファースト型と異なり、送信命令の信号を受信するまで、データを送信しないことが特長です。リーダトークファースト型は、RFタグの通信制御ができるので、範囲内の複数のタグの読み取りが可能です。