RFIDの歴史
こちらのページでは、RFIDが生まれた背景や歴史、現在の状況、バーコードや2次元コードとの関係性、RFIDの今後について解説します。
RFIDのはじまり
RFIDのルーツとなる無線周波数識別技術は、第二次世界大戦までさかのぼります。その概念は、1935年にスコットランドの物理学者ロバート・アレクサンダー・ワトソン・ワット氏が発見。その技術は軍事産業で実用化され、基地からレーダーを送信し、送信機を搭載した戦闘機がレーダーを感知し、戦闘機の位置を把握するものでした。その概念は、現在でもアクティブタイプのRFIDの基本になっています。また、同時にドイツ軍も同様の開発を行っていました。
そして1970年代になると、RFID技術の基礎となる書き換え可能なメモリを備えたタグがアメリカではじめて特許を取得します。その特許内容は現在でも、ICカードをリーダにかざし、カード内のデータと照合し、ドアの解錠を行う社員証カードなどに使われています。その後もアメリカでRFID技術の開発が進められていました。
そして、現代に近い技術の研究・開発が活発化したのは1980年代です。その当時はRFIDではなく、「データキャリア」と呼ばれ、主に欧米や日本で自動認識技術の製品化に向けた研究が行われていました。ただ、当時はバッテリーが必要で、タグ1個あたりの価格が1000円と高額だったこともあり、事業化は一時停滞。バーコードの付与が難しい自動車用エンジンの加工管理など、限られた分野でのみRFIDが導入されました。
しかし、1990年代後半に入ると、半導体技術の向上でバッテリーが不要になり、一気に小型化が進みました。また、1個あたり100円と低価格化が進んだことも普及の後押しをしました。そのほかにISO(国際標準化機構)やIEC(日本規格協会)がRFIDの標準化に取り組んだことも一般化した要因です。2001年にはBSE(牛海綿状脳症)をきっかけに「食のトレーサビリティ」に注目が集まり、その手段としてRFIDを取り入れる動きが活発化。さらに日本では、2002年に電波法が改正され、電波の出力規制などが緩和されました。そして現在では、RFタグの価格も1個あたり20円程度まで下がり、身近なところでは交通系ICカードや電子マネー、そのほかにも製造・流通・小売り・医療など、さまざまな業界で導入が進んでいます。
バーコードと共存する現在
「RFIDの特長」でも説明していますが、RFIDは非接触かつ障害物がある状況でも読み書きができ、なおかつ一括で複数のスキャンが可能です。さらにパッシブタグであれば、バッテリーも不要で半永久的に使えるなど、非常に多くのメリットがあります。また、RFタグの価格も安価になり、導入のハードルも低くなったと言えるでしょう。しかし、実際には交通系ICカードや電子マネーなどではよく目にしますが、物流や生産の現場ではバーコードや2次元コードと共存しています。その理由として以下が考えられます。
- 導入コスト
- バーコードや2次元コードのラベルを貼りつけたり、パッケージに印字したりするほうが安価です。RFIDの価格も下がっていますが、まだその価格差を埋めるまでには至っていません。
- 周波数
- 物流業界で注目が集まっている850~960MHzのUHF帯は、日米欧で周波数が異なり、統一されていません。また、この周波数帯域を使用できない国や地域もあり、グローバルな視点で見ると普及に時間がかかりそうです。
- セキュリティ
- RFIDは、無線通信を用いる性質上、知らない間に情報を読み取られたり、書き換えられたりする危険性があります。そのため、RFIDを導入するには、暗号化技術をはじめ、セキュリティ機能が求められます。このセキュリティ対策にも課題が残ります。
上記のような理由で現在、RFIDとバーコードが共存しています。そこで重要なことは、RFIDとバーコードのメリット・デメリットを理解することです。たとえば、RFIDは、自動認識技術により、目視による入力ミスや入力速度向上を目的に開発されたシステムです。一方のバーコードは、ラベルやパッケージに簡単に付与でき、読み取り不良が起きても数字や記号で記した「目視可能文字(ヒューマンリーダブル)」で目視読み取りできるメリットがあります。
あくまで一例ですが、RFIDにもバーコードにも得意・不得意があり、目的に合った方法を選ぶことが大切です。そのため完全にRFIDに置き換えるというより、バーコードや2次元コードと合わせ活用していくことが今後も重要になっていくでしょう。
そこで重要になるのが、データをスキャンするデバイスです。従来、バーコードや2次元コードならハンディターミナル、RFIDなら専用のリーダライタと別のものを用意する必要がありました。しかし、キーエンスでは、その両方に対応可能なハンディターミナルをご用意。それがハンディターミナル「DXシリーズ」です。「DXシリーズ」は、本体はそのままユニットを追加することで、バーコード・2次元コードはもちろんRFIDにも対応可能。柔軟なソリューションを提案しています。
RFIDの今後
RFIDは、無線で複数のRFタグからデータを読み取れることが最大のメリットです。たとえば、物流業界や小売業界の棚卸作業は、今までは手作業でひとつずつ確認・入力作業を行っていました。しかし、RFIDを活用すれば、その手間を大幅に削減可能です。また、すべての商品にRFIDを付与すれば、レジ作業の高速化、商品管理の最適化など、多くのメリットを生まれます。そうなれば人件費の大幅削減も可能になり、レジ作業を無人化し、必要な業務に人材を集約することも可能です。ただし、そのためにはRFIDの低価格化が課題になります。現在、経済産業省では、官民一体で実証実験を行い、RFIDの導入単価を下げる試みをはじめています。