OCRシステム選定のポイント

OCR使用目的を明確にする

OCR(光学的文字認識)を導入する場合、まず使用目的を明確にすることが大切です。たとえば、見積書や請求書などの書類をデジタル化してパソコンに取り込みたいのか、ラベルに記載された品番や消費期限/賞味期限などの文字を読み取りたいのか、バーコード/2次元コードと文字情報をひとつのリーダーで読み取りたいのか、読み取った文字情報をラベルなどに印字したいのか、生産ラインを流れる部品/商品を自動で読み取りたいのかなど、OCRを使用する目的はさまざまです。さらに読み取る文字は、印刷物に印字されたものなのか、部品に刻印された文字なのか、認識したい文字情報によっても選定条件が異なります。

ドキュメントOCRと業務用OCRの違い
ドキュメントOCRは、最も一般的な複合機などのスキャナで書類を読み取り、パソコンのソフトでOCR処理を行うものです。対して、業務用OCRは、ハンディターミナルや画像処理システムを用いて、ラベルや商品に印字された文字を読み取り、OCR処理を行うものです。ドキュメントOCRであれば、現在使っている複合機などが利用でき、OCRソフトを導入することで比較的簡単にはじめられます。一方で業務用OCRは、使用目的にあわせてOCRに対応したハンディスキャナや画像処理システムを購入する必要があります。また、業務用OCRは、動きながら文字を読み取る(また生産ラインであれば対象が動いている)ので、手振れや読み取り速度などが重要です。さらに読み取りの速さや正確性が求められます。

OCR読み取り機器の種類

OCRでは、書類やラベル、部品/商品に印字された文字を読み取る必要があります。その読み取りを行う機器を総称して「OCRリーダー」と呼んでいます。詳しくは、「OCRリーダーの種類」でも説明していますが、主に「ハンディターミナル型」「据え置き型」「パソコンソフト型」の3種類に分けられます。

ハンディターミナル型
ハンディターミナル型
据え置き型
据え置き型
パソコンソフト型
パソコンソフト型

業務用OCRの導入を検討しているのであれば、その業務で求められている性能を満たしているのか、業務上必要な文字に対応しているのかなど、条件に合った読み取り機器を選ぶ必要があります。以下は、運用上で出てくる可能性がある文字の一例ですが、たとえば汚れやハレーション、ダイレクトパーツマーキング、枠囲いの文字、フォーマットが異なる日付表示など、さまざまなものがあります。このような文字への対応も条件のひとつです。

そのほか、選定する際の性能面について詳しくは、後述する「業務用で重視するポイントまとめ」で詳しく説明します。

運用で現実的に出てくる文字の一例

文字列
文字列
 
日付
日付
ハレーション
ハレーション
汚れ
汚れ
文字間接触
文字間接触
枠線越え
枠線越え
罫線が重なる
罫線が重なる
文字間接触
文字間接触

導入後のサポート面

現在も活発に研究・開発が行われ、日々新しいOCRソフトが登場しています。進化を続けるOCRですが、業務用として導入する場合、簡単にOCRソフトを入れ替えることが難しいものです。そこで安心して長く使える製品を選ぶことが重要。OCRの導入では、機能面はもちろんですが、導入後も安心して使えるサポート体制が整っているのかも選定ポイントになります。その際に以下のポイントを確認しましょう。

商品改善

99%以上の文字認識を実現しているOCRソフトもありますが、いまだに100%ではありません。そのため、読み取れない文字もあります。そういった場合に丁寧に対応してもらえるかも重要なポイントです。アップデート情報や新商品の開発状況なども目安になるでしょう。

安定供給

長く使うものだけに、製品やサービスの安定性も重要な選定基準です。商品の供給やアフターサポートの体制が安定しているか、機器を追加したいときに必要な製品が手に入るか、またOCRに関するサービスが継続して提供されているかといったポイントを確認しましょう。

費用

OCRソフトは、買い切りのものもあれば、ライセンス契約で月額費用がかかるものもあります。とくに業務用OCRに関しては、月額費用がかかるものが多くなっています。そのような月額費用がかかるOCR製品は、使用する機器の台数や費用対効果なども含めて検討しましょう。

業務用で重視するポイントまとめ

業務用OCRは、複合機などでスキャンするドキュメントOCRとは異なり、狙ったところだけ正確に読み取れるか、十分な読み取り速度があるかなど、認識精度のほかにも重要な選定基準があります。こちらでは、業務用OCRを導入する際に、必ずチェックしていただきたいポイントをわかりやすくまとめました。あくまで選定基準の一部ですが、以下のような条件を満たすOCRソフトやOCR機器を選ぶことで、業務改善効果が生まれます。

  • 誤認識が少なく、正確に文字を読み取れるか?
  • さまざまな部品/製品に対して、読み取りが可能か?
  • 大量の部品/商品に対応できる認識速度があるか?
  • 動きながら、また動いている対象に対して読み取りが可能か?
  • 対象物に対して、角度が変わっても正確に読み取れるか?
  • 必要な箇所だけ正確に読み取り、文字認識できるか?
  • 業務に適した形式でデータが保存されるか?
  • 暗いところでも正確に読み取りができるか
  • OCRのほか、バーコード/2次元コードにも対応しているか?

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