知っておきたい食品衛生法と印字の関係性
食品に関わる事業者であれば、食の安全を守る「食品衛生法」の改正法案が2018年6月7日に国会で成立し、6月13日に交付されたことはご存知かと思います。
食品衛生法は、1947年に定められた法律で、2003年に抜本的な改正が行われました。その後も食品に関する問題が発生するたびに見直しが行われてきましたが、生活環境の変化やグローバル化に対応するために2018年6月、15年ぶりとなる改正が施行されました。こちらのコラムでは、食品衛生法改正の基礎知識に加え、賞味期限や消費期限、ロットNoなどの印字との関係性をご説明します。
食品衛生法とは
最初に食品衛生法の基本をご説明します。食品衛生法は、厚生労働省により以下のように明記されています。
この法律は、食品の安全性の確保のために公衆衛生の見地から必要な規制その他の措置を講ずることにより、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、もつて国民の健康の保護を図ることを目的とする。
※厚生労働省 食品衛生法 第一章 総則より抜粋
わかりやすく言い換えると、「国民が健康で安全に飲食できるように、必要な規制や措置を講じて、飲食によって問題を防止しましょう」ということです。食品汚染や腐敗、食中毒などの飲食による事故を防止することが食品衛生法の目的です。その手段として、食品に含まれる添加物、調理に使用する器具、包装する容器、情報の表示などを規定しています。
外食はもちろん食品製造、小売など食品業界すべての事業者に関わる法律で、対象は医薬品・医薬部外品を除く飲食物です。食品や飲料はもちろん、例えば乳児が口に入れる可能性がある玩具も規制対象になります。
食品衛生法の改正で何が変わる?
絶対に覚えておきたい7つの変更点
食品衛生法は、食品を清潔で衛生的に扱うことが大前提です。安全が確保されていない不衛生な食品の販売や配布を禁止し、消費者が安心して食品や飲料を口にするために様々な規制が設けられています。2018年6月の食品衛生法の改正では、国際的な衛生管理手法であるHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)の制度化や健康食品の規制強化、食品リコールの報告制度などの見直しが行われました。その背景には、少子高齢化による家族構成の変化や消費者の食に対する意識、輸入食品の増加などに加え、グローバル化への対応やインバウンドの影響があります。2018年の食品衛生法の改正は、具体的に以下の7項目が大きく変更になりました。
1.広域におよぶ“食中毒”への対策を強化
2017年夏に広域で発生した腸管出血性大腸菌O157食中毒事件の発生を踏まえ、国や都道府県等が食中毒拡大防止のために連携・協力し、厚生労働大臣が関係者で構成する広域連携協議会を設置して対応します。
2.原則すべての事業者に“HACCPに沿った衛生管理”を制度化
HACCP(ハサップ)とは、「Hazard Analysis Critical Control Point」の頭文字をとった言葉で、事業者が食中毒菌汚染や異物混入などの危害要因(ハザード)を把握したうえで、原材料の入荷から製品の出荷にいたる全行程の中で、危害要因を排除または低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保する手法のことです。
HACCPは、国連の国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格 (コーデックス) 委員会から発表され、各国にその採用を推奨している国際的に認められたものです。食の安全の高まりから先進国を中心に義務化が進められています。食品衛生法の改正では、グローバルスタンダードになっているHACCPの義務化が盛り込まれました。
- 【関連コラム】
- HACCP(ハサップ)義務化と衛生管理の手順
3.特定の食品による“健康被害情報の届出”を義務化
サプリメントなどの健康食品による健康被害の相談が増加していることを受けて新設された項目です。対象になるのは、健康食品のうち特別の注意を必要と厚生労働大臣が指定する成分等を含有する食品になります。「特別の注意を必要とする成分等」は、プエラリア・ミリフィカやアルカロイドなどが想定されてます。これら「特別の注意を必要とする成分等」を含む食品で健康被害が発生した場合は、行政への被害情報の届出が義務化されます。
4.“食品用器具・食品包装”にポジティブリスト精度導入
従来の食品用器具・容器包装の材料は、禁止されていない物質であれば使用できる「ネガティブリスト制度」で運用されていました。しかし、安全が確保されていなくても禁止されていない材料であれば使用できるという問題がありました。そこで安全性を評価し、安全が担保された物質でなければ使用できない仕組みである「ポジティブリスト制度」を導入します。
すでに欧米では「ポジティブリスト制度」が導入されており、日本も国際基準に合わせた形と言えます。現在、国内で製造されている容器・包装は、関連団体による独自ポジティブリストに合致した製品が多く、今後は輸入品に用いられる容器包装が問題になると予想されます。
- 【関連コラム】
- 食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度
5.“営業届出制度”の創設と“営業許可制度”の見直し
HACCPの制度化に伴い、営業許可の対象業種以外の事業者の所在などを把握するために届出制度が実施されます。現在の営業許可の業種区分を実態に応じて見直し、営業許可業種(政令で定める34業種)以外の事業者に届出制度を創設します。現行の政令では、飲食店営業や食肉販売などの34種に加え、自治体ごとに独自に定めた許可業種がありました。また、コンビニエンスストアやスーパーなどは1施設で飲食店営業、食肉販売業など複数の営業許可申請を行う必要がありました。このような営業許可の制度も見直されます。
6.食品の“リコール情報”は行政への報告を義務化
食品のリコールは年間1000件以上発生していますが、現在は食品の自主回収(リコール)情報の公開について法律上の規定がなく、自治体により対応がバラバラでした。そのため消費者は食品事故が発生しても詳しい情報を知ることができないという問題がありました。そこで事業者が自主回収(リコール)する場合、自治体へ報告する仕組みを厚生労働省が主体となり構築します。
今後は、食品衛生法に違反または違反の恐れがあるリコールについて、事業者は国のデータベースシステムにリコール情報を入力し、届出を行う必要があります。また、厚生労働省は、ウェブサイトを通じてリコール情報を消費者に提供します。これによりリコール情報が一元化され、消費者は情報を探しやすくなり、健康被害の拡大防止につながります。
7.“輸出入”食品の安全証明の充実
輸入食品の安全性を確保するため、食肉などはHACCPに基づく衛生管理、乳製品・水産食品は衛生証明書の添付を輸入要件にします。輸出食品については、輸出先の衛生要件を満たしていることを示すために法規制も創設されます。
新しい食品衛生法の施行スケジュール
新しい食品衛生法の施行は、「交付の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日(ただし1は年、5および6は3年)」となっています。以下に施行スケジュールをまとめていますが、項目によって施行日までの期日が異なります。例えば、「1.広域におよぶ“食中毒”への対策を強化」は交付された2018年6月13日から1年以内に施行されます。「2.原則すべての事業者に“HACCPに沿った衛生管理”を制度化」は2年以内で施行日から1年間を経過措置期間、「5.“営業届出制度”の創設と“営業許可制度”の見直し」は3年以内とばらつきがあるので注意してください。
施行期日:交付日から1年以内
施行期日:交付日から2年以内
経過処置:施行日から1年間
施行期日:交付日から2年以内
施行期日:交付日から2年以内
経過処置:施行日に流通している容器・包装は流通可能
施行期日:交付日から3年以内
施行期日:交付日から3年以内
施行期日:交付日から2年以内
- ※交付の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日(ただし1は年、5および6は3年)
- ※交付日は2018年6月13日
食品衛生法と印字の関係性
食品衛生法では、食品の安全性を高めるために容器や包装への賞味期限や消費期限などの表示を定めています。 特に包装工程で行われる消費期限や消費期限の印字は、日付の間違いや印字の欠け・かすれなどの表示ミスが発生しやすく、 法令を順守するには印字が大切です。 また、食品衛生法の改正に伴い、さらに印字の重要性が高まっています。特に「2.原則すべての事業者に“HACCPに沿った衛生管理”を制度化」「6.食品の“リコール情報”は行政への報告を義務化」の2つの項目は、印字に深く関わっているので少し詳しく解説します。
HACCPによる衛生管理制度化で
ロットNoとの紐づけが必要になります
HACCPでは、製造から包装、出荷までの工程でロットNoと紐付けた情報管理が求められます。包装や容器、出荷用ダンボールに対して賞味期限・消費期限のほかロットNoを印字し、トレースする必要があります。
- 【関連コラム】
- HACCP(ハサップ)義務化と衛生管理の手順
リコール情報の報告制度に伴い食品表示法の一部内容も改正されます
アレルギー表示や消費期限の印字ミスなどは、健康被害につながります。新しい食品衛生法では、「6.食品の“リコール情報”は行政への報告を義務化」が追加されたので、このような印字ミスもすべてリコール情報として届出を行う必要があります。
さらに食品衛生法の改正に伴い、食品表示法の改正も行われます。「6.食品の“リコール情報”は行政への報告を義務化」への対応が主な変更点ですが、2018年11月9日に国会に法案を提出し、11月22日に衆議院において全会一致で可決され、12月8日に参議院において全会一致で可決・成立しました。その後、12月14日に平成30年法律第97号として公布されました。この法律は、公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日から施行されます。
報告事業者 | 株式会社○○食品 (○○県××市△丁目○○-××) |
---|---|
自主回収の理由 | 賞味期限を20XX年10月20日とするところを、20XX年01月20日と誤って表示したため |
問い合わせ先 | 株式会社○○食品 営業部 0120-○○○-××× |
回収開始年月日 | 20XX年9月15日 |
想定される健康影響 | 誤った賞味期限までの品質保持の証明ができず、何らかの健康被害を否定できません。 |
食品衛生法に対応した印字について
食品衛生法の改正に伴い、今まで以上に正確な印字が求められるようになりました。しかし、従来の印字機には、それぞれに課題がありました。
スタンプによる印字は、押圧を一定にすることが難しく、作業者によりばらつきが発生していました。インクの濃さを調整する必要があり、作業中に乾いてかすれてしまうこともあります。
すばやく貼れるラベルですが、剥がれやすいというデメリットもあります。また、出荷後にラベルを貼り直すことができ、改ざんのリスクも潜んでいます。
温度調整が難しく、かけやかすれ、ピンホールが起きやすいという問題があります。印字する文字を変更するには、温度が下がるのを待ってから変更する必要があり手間もかかります。
スタンプやラベル、ホットプリンタの課題を解決する印字方法が産業用インクジェットプリンタです。キーエンスのユニバーサル インクジェットプリンタ「MK-Gシリーズ」は、小型のヘッドを採用しているので取付方向を選ばず、現在使用している包装機や充填機に設置が可能です。
印字内容の切り替えはカメラで撮るだけ
産業用インクジェットプリンタ MK-Gシリーズ
非接触で対象物にインクを吹き付けて印字する産業用インクジェットプリンタは、印字掛けやすれが起こりにくいことがメリットです。非接触のためコンベアを高速で流れる商品にも印字でき、品種や日時の変更も簡単です。食品衛生法の改定に伴い、正確性が求められる印字にも対応可能です。
対象物の素材や形状を問わず、にじみやかすれのない正確な印字が可能です。
キーエンスのユニバーサル 産業用インクジェットプリンタ「MK-Gシリーズ」 は、小型ヘッドを採用しているので、すでに使用中に包装機や充填機に設置することができます。そのため時間とコストを抑えて印字機を導入できます。
自動包装機でもっとも代表的なピロー包装機
調味料やレトルト食品の包装に使用するロータリー式充填機
主に食品を化粧箱へ梱包するカートナー
ダンボールに製品の最終梱包をする封函機
飲料を充填するライン式ボトル充填機
贈答品などのギフトを包装する帯掛包装機
高速でビンにラベルを貼付けるホッパーラベラー
並列したカップに充填するカップシーラー
- 【詳しい導入事例を見たい方はこちら】
- 産業用インクジェットプリンタ「MK-Gシリーズ」導入事例 <食品/薬品/化粧品業界編>