歯車の歯厚を測定する

「歯厚」とは、ピッチ円上での1個の歯の厚みです。歯厚の測定法には「弦歯厚法」や「またぎ歯厚法」、「オーバーピン(玉)法」があります。

ここでは平歯車を例に、これらの手法による歯厚の測定方法を説明します。

弦歯厚法

「弦歯厚」とは、ピッチ円上の両側歯面の対称な2点間の弦の長さです。

弦歯厚法では、歯たけ(H)にあたる部分の厚みを歯厚ノギスや歯厚マイクロメーターまたは歯形キャリパーで測定します。

古くから用いられている方法ですが、外径の精度や測定子の当たり具合に左右されるため、高精度は期待できません。

弦歯厚の測定箇所
弦歯厚の測定箇所
  • A: ピッチ円
  • l: 弦歯厚
  • H:キャリパー歯たけ

またぎ歯厚法

ある枚数の歯を歯厚マイクロメーターなどの測定子で挟み、その長さを測定します。このとき、挟んだ歯の枚数を「またぎ歯数」といいます。歯数から歯厚を測定するため、基準面の設定は不要です。

弦歯厚と同様、この方法も測定値は測定子の当たり具合によって異なる場合があります。また、歯の左右の圧力角が異なっている場合も誤差の原因になります。さらに、ピッチや歯形の影響も受けるため、歯車の全周を数回にわたって測定する必要があります。

しかし、工作中に歯厚を測定し、測定値をカッターの工具追い込み量に換算できるというメリットがあるため、最も一般的な歯厚測定法として利用されています。

またぎ歯厚の測定方法
またぎ歯厚の測定方法
A: またぎ歯厚

オーバーピン法

「玉法」ともいわれる歯厚測定法です。偶数歯の場合は相対する歯溝、奇数歯の場合は180/z(°)だけ偏った歯溝にピンまたは玉を入れて測定します。外歯車ではその外側の寸法(オーバーピン寸法)、内歯車では内側(ビトゥインピン径)を測定して歯厚を求めます。

オーバーピンの測定方法
外歯車(偶数歯)
外歯車(偶数歯)
外歯車(奇数歯)
外歯車(奇数歯)
内歯車(偶数歯)
内歯車(偶数歯)
内歯車(奇数歯)
内歯車(奇数歯)

画像寸法測定器による測定

画像寸法測定器は、測定対象物をイメージセンサーで捉え、そのデータを画像処理し各部の測定値を算出・表示する非接触測定器です。

照明用のLEDや受光レンズ、撮像素子から画像処理に至るまで測定に適した工夫が施されていて、位置決めやピント合わせなど、測定者の技量による計測誤差はありません。また、操作方法も特別な習熟を必要としないよう配慮されています。

複雑な形状の部品でも、同時多点測定が可能であるため、一度の操作でピッチや円周はもちろん、またぎ歯厚やオーバーピン寸法・ビトゥインピン径の測定が可能です。設計値との照合もできるので、合否もその場で確認することができます。

画像寸法測定器による歯車の測定
画像寸法測定器による歯車の測定

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