リンク機構は、回転運動を直線運動にするなど、入力動作を異なる動作に変換するために組み合わせた機械要素です。一方、クランク機構はクランクピン・スライドピン・ロッドなどを組み合わせたもので、回転運動や往復運動を行うリンク機構の1つです。
たとえば、下図のように4本のリンク(リンクa~d)を対偶(ジョイント)でつなぎ合わせ、リンクaを固定して、それぞれのリンクが対偶の周囲を自由に回転できるようにしておきます。そして、対偶Oを中心にリンクbを回した場合、リンク機構は以下のように動作します。
- ①リンクcは対偶Qの周囲を回りません。リンクcとリンクdの対偶Rが、MとNの間を往復運動します。
- ②リンクbは、対偶Oを中心に回転運動します。
上記のとおり、リンク機構は回転運動を往復運動に変えたり、往復運動を回転運動に変えたりする働きをします。
このようなリンク機構を実際に使うには、対偶Oと対偶Qに軸A・Bを付けて回転運動や往復運動をさせます。
リンク機構の、対偶Oを通る回転する軸Aと軸Bを接合すると、下図のように一部分が曲がった回転軸になります。軸Aと軸Bを接合したものを「クランク」といい、このような構造を「クランク機構」といいます。また、軸Dをつなぐ点Pの回転軸を「クランクピン」、軸Dのことを「連接棒」といい、このクランク機構は以下のように動作します。
- ①クランクを図のように回すと、軸D(連接棒)の端の点Rと軸Cは、往復運動をします。
- ②点Rが往復運動するとクランクが回転運動をします。
上記のように、クランク機構はクランクまたはその原理によって、回転運動を往復運動に、往復運動を回転運動に変えます。つまりクランク機構は、軸Eの両端の点(OとQ)が固定されている場合、軸Eは必要ではないということです。
このようなクランク機構を実際に使う場合は、軸D(連接棒)の先のピンRを軸Eに付けて、軸Dを軸Eに沿ってスライドできるようにします。この場合、クランクを回転させると、ピンRが軸Eに沿って直線往復運動をします。
蒸気機関車は文字通り、蒸気の圧力を動力として車輪を動かしています。この力の伝達には、多くのリンク機構が使われています。
「火室」といわれるボイラーの中にある燃焼室で石炭を燃やし、その熱でボイラーの水が沸騰すると蒸気が発生します。発生した蒸気をいったん「蒸気ドーム」に集め、そこから主蒸気管という配管を通してシリンダーに送り、蒸気の圧力でピストンを往復運動させます。このピストンの往復運動が、蒸気機関車を動かす力になります。
蒸気機関車で使われているリンク機構は、往復運動を回転運動に変える仕組みです。
蒸気圧で往復運動するピストンと、動力をレールに伝える「動輪」または「主動輪」といわれる車輪を、「主連棒」という軸で連結します。そして、主連棒を動輪の中心からずれた位置に接続します。これによって、往復運動を回転運動に変換する「スライダークランク機構」ができあがり、動輪は回ることができます。
以上は、あくまでもリンク機構を簡単に説明したに過ぎません。他にもクロスヘッドや各動輪のバランスウェイト、返りクランクなど蒸気機関車が動く上で必要な機構はたくさんあります。そして、蒸気機関車の力強いドラフト音を伴うダイナミックな走りは、これらの機械要素が正確に動作することで実現されています。
蒸気機関車の動力伝達機構は、1844年にベルギーの機械技術者が発明したとされています。不世出の傑作といわれる機構の複雑さと精密な動作を、簡単な定規やドラフターしかない時代に作り上げたことは、今もって驚嘆するしかありません。
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