ばねは、伸びる/縮むなど変形した力を蓄え、その反発力を作用とする機械要素です。その変形は「たわみ」の量で表されるばねの「弾性エネルギー」であり、反発力は「バネレート」や「スプリングレート」といわれる「ばね定数(ばねじょうすう)」で表されます。そして、これらの値でばねの力は決まります。
たとえば、ばね定数は、ばねを一定の長さだけ伸縮(変位)させるときに必要な力のことです。ばねを1mm縮めるまたは伸ばすときに必要な力が4Nであれば、
になります。単位は、以前はkg(キログラム)でしたが、今は「N(ニュートン)/mm」です。また、伸縮させる量(変位)は「たわみ」です。
ここでは、これらの値の求め方を通じて、それぞれの関係を説明します。
伸縮する量(変位)は「たわみ」といわれ、たわみは以下の公式で表されます。
ばね定数は、そのばねの硬さ(反発力の強さ)を表します。一般に、線材が柔らかいばねは縮みやすく、硬いばねは縮みにくくなります。
そこで、ばねの硬さを数値化するために、ばねを1mm縮めるために必要な荷重を計測して、数値表記したものがばね定数です。
ばね定数は、フックの法則から求めることができます。
伸びる、縮むなど、ばねが変形した蓄える力を「ばねの弾性エネルギー」または「弾性力による位置エネルギー」といいます。力はばねの伸びに比例し、ばねの伸びが大きいほど力が大きくなり、その大きさは直線的に変わります。
ただし、どんなばねにも必ず弾性には限界があり、限界を超える荷重がかかると元の形に戻らなくなります。この、戻らなくなる現象を「塑性」といいます。つまり、ばねは弾性がおよぶ範囲の荷重で使用すべきであって、塑性の範囲まで荷重を加えてはいけません。これはばねの種類にかかわらず、すべてのばねに共通の規則です。
弾性エネルギーを求める式は以下の通りです。
これに「P= kδ」を代入すると
ばねの性能を表す尺度として、「単位体積当たりの弾性エネルギー」があります。これは、ばねを1本の丸棒と考え、その体積でばねの衝撃吸収力を求める方法です。この数値が大きいほど、小さな体積で大きなエネルギーを吸収することができることを表します。
単位体積当たりの弾性エネルギーは、以下の式で求めることができます。
- A:サスペンション
- B:スプリング
- C:ダンパー
ばねの機能の1つに、振動を抑制する「制振機能」があります。振動の要因には、機械なら動作中に発生する振動、自動車なら路面の凹凸による振動、建築物の場合は災害など自然環境による振動があります。
ばねに振動が加わるとばねが振動します。さらに振動(強制振動)が加わって物体の固有振動数*に近づくと、きわめて振動が大きくなる「サージング」という現象が発生します。ばねは振動エネルギーが消えるまで振動を続け、ばねに取り付けられた機械や自動車、建築物も揺れ続けます。そこで、この振動を吸収し短時間で揺れを収拾するための装置として、ばねと共に取り付けられるのが「減衰装置(ダンパー)」です。
ダンパーは、ばねの振動を抑える制振装置です。たとえば、自動車のサスペンションは、スプリング(ばね)とダンパーで構成されています。スプリングは車体の重量を支え、路面の凹凸に合わせて伸縮し、その反発力で路面にタイヤを押し付けると同時に、車体と乗員に伝わる衝撃を軽減します。また、ダンパーは「ショックアブソーバー」ともいわれ、スプリングの振幅を抑制する部品です。ダンパーがないと、スプリングは伸縮を続けて車体は揺れ続けます。ダンパーは、サスペンションの揺れを抑えると同時にスプリングが振幅する速度も制御します。つまり、自動車の車体が共振しないのは、ダンパーの働きによるものといえます。
- 固有振動数
- ある物体が自由振動した際に現れる、その物体が持つ固有の周波数のこと。
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