ねじの緩みと緩み止め
ねじは、通常は締まっていなければなりません。しかし、外せないように結合してしまうと保守や点検といったメンテナンスや修理などができなくなります。つまり、締結要素であるねじですが、必要に応じて緩めたり外したりできなければなりません。
このため、ねじは締めて使うのですが、同時に緩むようにもなっているということです。時間が経ったり、振動・熱の変化などの原因で、ねじは緩む可能性があるということでもあります。
ここでは、ボルトとナットを例に、ねじが緩む原因と緩みを防止する方法を説明します。
ねじ緩みの原因
ボルト・ナットで部品を締め付けると、ボルトとナットの座面に圧縮力がかかります。また、締め付けられている部品からは、ボルトとナットに対して反発力がかかります。このとき、座面と部品の間には大きな摩擦力が発生し、この力でねじは固定されています。
つまり「ねじが緩む」ということは、この摩擦力が何らかの原因で失われるからで、このときのナットの状態は、「回転してない」と「回転している」の2種類に分けられます。そして、ねじが緩んだ原因は、ナットの状態によって判断することができます。
ナットの状態 | 原因 | 説明 |
---|---|---|
回転しないで 緩む |
初期緩み | ボルトを締めるときに、接合される側(ボルトで固定される部材)やボルト・ナットの座面などに圧力がかかります。ボルト・ナットを締める前、それぞれ接触する面には、微細な凹凸があります。初期緩みは、時間が経つことで凹凸は摩耗し、徐々に平坦になって座面の負荷が減ることで発生する緩みです。 |
陥没による緩み | ボルト・ナットを締め付けた圧力で、接合される側の表面が陥没することによる緩みです。 | |
衝撃・振動による緩み | 振動、衝撃で締め付け力が低下し、発生する緩みです。 | |
温度差による緩み | 温度差による膨張と収縮で締め付け力が低下し、発生する緩みです。 | |
回転して緩む | 戻り回転による緩み | ボルト・ナットが戻る回転の力で発生する緩みです。 |
軸直角への繰り返し外力による緩み | 締め付けられていない部分に、横(軸直角方向)の力が繰り返しかかることで発生する緩みです。 |
ねじの緩みの防止方法
ねじの緩みを防止するためのねじ部品としては、「座金(ワッシャー)」や「ダブルナット」、「割れピン」などがあります。
座金(ワッシャー)
座金には、ばね座金・歯付き座金・平座金などがありますが、このうち緩み止めには「ばね座金」と「歯付き座金」が使われます。
ばね座金は「スプリングワッシャー」ともいわれ、緩みの防止用としては一般的な座金です。コイル状に一巻または二巻した座金で、ねじが緩んだときは、座金の弾性力による摩擦で緩みを防止します。しかし、座金の弾性力は限定的との実験報告もあり、緩み止めの効果は疑問視されています。一方、歯付き座金は座面に歯を設けた座金です。歯がかみ合う力を利用するため、高いねじの緩み防止効果があります。
ちなみに「平座金」は、ボルトやナットを強く締め付けたときに、座面で部品が傷付かないために使用します。座面が広くなるので、一定の緩み止め効果もあります。
ダブルナット
ダブルナットは、振動による緩みの防止に効果があるとされています。一般に、ボルトとナットは1個ずつ対で使われます。しかし、ダブルナットは、1本のボルトに対して2個のナットを上下に重ねて使います。これにより、ナットとナットの間に引張力が働き、ナット同士を締め付けることができ、ねじの緩みを防止します。
- A:ロックナット
- B:引張力
割れピン
割れピンは、溝付きナットと合わせて使います。ボルトにナットを挿入し、ボルトにある穴にピンを差し込み、溝にはめ込みます。これにより、ナットは回らなくなり緩みを防止することができます。
- A:割れピン
- B:溝付きナット
その他の緩み防止法
ねじの緩みの防止には、接着剤を使う方法もあります。ねじの溝に緩み防止用接着剤を塗布し締め付けると中で固化し、ねじが緩まなくなります。この方法は、エンジン部品の封止やエアバッグを固定するねじなどに用いられます。
ただし、中には、ねじが外せなくなる接着剤もあるので、使用には注意が必要です。