LVDT(差動トランス)の原理
LVDTは、形状の検出に「差動トランス」という方式を用いた接触式変位センサの一種です。LVDTはワークの形状変化をスピンドルの高さの変化で検出します。スピンドルの高さの変化を読み取る方式には、「差動トランス」方式以外に「スケール」方式や、これらの長所を活かし欠点を克服した「スケールショットシステムII」という方式があります。以下では、それぞれの構造と検出原理、メリットとデメリットについて検証します。
LVDT(差動トランス)方式
LVDT(差動トランス)とは、機械的な直線運動を変位量として電気信号に変換する原理です。この方式の接触式変位センサは、対象物の形状変化を電気信号に変換することで読み取ります。
LVDT(差動トランス)方式の構造
- A
- コイル
- B
- バネ
- C
- コア
- D
- リニアボールベアリング
- E
- ダストブーツ
- F
- 接触子
LDVT(差動トランス)方式の接触式変位センサの内部には、中心にコアがありコアを包むようにコイルがあります。コアの先端には接触子が取り付けられており、コアと接触子で構成されたスピンドルをバネでワークに押し付けます。このバネの力で、スピンドルはワークの形状変化に合わせて上下にスライドすることができます。
LVDT(差動トランス)方式の検出原理
LVDT(差動トランス)方式の接触式変位センサのコイルに電流を流すと磁界が発生します。その中のコアが動くと、動いた量に応じてコイルのインピーダンスが変化し、出力信号レベルが変化します。コアが動いた量はワークの形状変化を示すため、出力信号レベルの変化を検出することで、変位量を測定することができます。
- A
- 補正用コイル
- B
- 検出用コイル
- C
- コア
- D
- 信号レベル
LVDT(差動トランス)方式の特徴
メリット
- スピンドルの位置によって、信号レベルが変化するため「絶対位置」を把握できる。
(ゼロ点調整不要、値飛びしない)
デメリット
- 精度がスピンドルの端付近では落ちてしまう。コイルを利用した原理のため、中心付近では磁界が均一にかかるが、端付近ほどバランスが崩れる傾向がある。
- 直線性や温度特性の考慮が必要。
スケール方式
スケール方式の構造と検出原理
スケール方式は「パルスカウント」方式ともいわれます。この方式には、S・N極の磁界を利用してパルスカウントを行う「磁気型パルスカウント方式」と、スケールのスリットを光源として受光素子でパルスをカウントする「光パルスカウント」方式があります。
- a
- スケール
- b
- 磁気検出素子
- c
- スリット
- d
- 光
スケール方式の特徴
メリット
- 精度が高い。(精度は基本的にスケールの目盛りの精度で決まる)
- スケールの中心付近でも端付近でも、スケールの目盛りの幅は変わらないので、直線性を考慮する必要がない。
- 温度変化があっても、スケールの目盛りは大きく変化しないため、温度特性は良い。
デメリット
- スピンドルが振動等で急激に動いた場合、光電センサの応答が間に合わず、値飛びする。
スケールショットシステムⅡ(キーエンス独自の新原理)
スケールショットシステムⅡとは、位置によって異なる複雑なパターンのスリットを組み込んだ「絶対値ガラススケール」をCMOSセンサで高速撮影する世界で初めての方式です。
絶対値ガラススケール
スケールショットシステムⅡの構造と検出原理
キーエンスのGT2シリーズは、一般的なスケール方式と同様に、投光部・受光部・スケールを内蔵していますが、「絶対値ガラススケール」のパターンを読み取ることでスピンドルの位置を特定することができます。
- (1)スピンドルが動くと絶対値スケールが動く。
- (2)スケールに組み込まれた複雑なパターンをCMOSセンサで高速に読み取る。
- (3)スピンドルの位置情報をアンプに伝える。
- A
- 絶対値スケール
- B
- 超解像CMOS
- C
- HL-LED
HL‐LED:点光源でありながら照度ムラのない均一な光を従来比9倍の高輝度で照射できる新開発LED。
※HL=High Luminance
超解像CMOS:絶対値ガラススケールを通過したLED光を高感度に受光し、従来比2倍に解像度を高めて出力信号を作り出せる撮像素子。
従来のLVDT(差動トランス)方式・スケール方式との違い
スケールショットシステムⅡの特徴
メリット
- 絶対位置がわかる。
- 位置情報を検出しているので、ゼロ点調整不要で値飛びもしない。
- スケール式のため、測定範囲全域で高精度。
- 温度特性が良い。
デメリット
- 特になし