気体レーザーと固体レーザー・半導体レーザーの違い

レーザー溶接に使用するレーザーは、媒質に気体・固体そして半導体を使います。
出力されるレーザー光は、媒質によって発振形態や出力、変換効率が異なります。
ここでは、それぞれの特徴について説明するとともに、レーザー溶接にとって大きな要素である発振形態についても説明します。

媒質によるレーザー光の違い

媒質の違いによる発振形態・出力・変換効率の違いは、以下の通りです。

発振形態(P:パルス、CW:連続) 出力(P:パルス、CW:連続) 変換効率(%)
気体レーザー CO2
  • P
  • CW
  • P:10MW
  • CW:20kW
  • ~20
固体レーザー YAG
  • P
  • CW
  • P:10MW
  • CW:400W
  • Qスイッチ:10MW
  • ~3
半導体レーザー GaAs(ガリウムヒ素)
InGaAsP(インジウムガリウム砒素リン)
  • P
  • CW
  • P:10W
  • CW:100mW
  • ~100

発振形態について

レーザーの発振形態には「パルス発振」と「連続発振」があります。パルス発振はレーザー光の強度や波長・位相をコントロール(光変調)しパルス波を発生させる形態です。レーザー発振器のQ値を制御することでパルスを発生させるQスイッチレーザーなどの方法があります。「Q値」というのは、蓄積されたエネルギーに対する周期ごとに消費されるエネルギーの割合のことで、以下の式で表すことができます。

Q=(2π・蓄積エネルギー)/(周期ごとの消費エネルギー)

また、発振形態によって、溶接ビードは以下のように異なる形状になります。

パルス発振(P)

パルス発振(P)

連続発振(CW)

連続発振(CW)
A
溶接ビート
B
レーザー光
C
ビーム移動
D
加圧

固体レーザー

固体レーザーとは、レーザー媒質にイットリウム・アルミニウムおよびガーネットといった鉱石(YAG)やイットリウム・バナデート結晶(YVO4)などを使ったレーザー光です。固体レーザーは単位体積あたりのレーザー出力が大きいため、共振器が小型であっても大きなレーザー出力を得ることができます。

固体レーザー

A
全反射鏡
B
レーザー光
C
励起光源(ランプ・LD)
D
YAG結晶
E
部分反射鏡
F
レンズ
G
光ファイバー
H
レンズ
I
被加工物

気体レーザー

気体レーザーとは、レーザー媒質にCO2などを使ったレーザー光です。固体レーザーなどに比べてレーザー媒質が均質で、損失が少なく、共振器の構造を大きくとることができるため大きなレーザー出力を得ることができます。

気体レーザー

A
全反射鏡
B
電極
C
レーザーガス
D
部分反射鏡
E
レーザー光
F
金属ミラー
G
レンズ
H
被加工物

半導体レーザー

半導体レーザーとは、Ⅲ-Ⅴ族半導体または、Ⅳ-Ⅵ族半導体を使ったレーザー光です。どちらも小型の装置で大きなレーザー出力を得ることができます。半導体は固体の一種ですが、レーザー技術の分野では固体とは別に分類される場合もあります。

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