株式会社ディノス・セシール

ディノス・セシール CECO ⽯川 森⽣⽒、ディノスマーケティング・EC本部 ディノスEC企画部 運営管理ユニット 原 義隆⽒に、KIを導⼊した⽬的と経緯について詳しく聞きました。

「ECサイト、カタログ通販、テレビ通販のデータをKIで統合解析することを目指しています」

株式会社ディノス・セシールについて

ディノス・セシールは⽇本を代表する通販企業の⼀つ。テレビショッピングに強みのあるディノスと、⼥性向けインナーなど⾐料品に強いセシール。この通販の⽼舗企業2社が2013年に合併し、ディノス・セシールとなった。

年商 1,078億円
従業員数 約1,200名
(2019年3月期)

※この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数で記述しています。

ディノス・セシールの概況

ディノス・セシールの通信販売の概況を教えてください。

概況は次のとおりです。

  • 販売媒体は「カタログ、テレビ、ECサイト」の3種
  • いずれも主要顧客層は「50代以上の⼥性」
  • 主要カタログは年4〜6回発⾏。その他、⼩カタログ、パンフレットなども不定期発⾏
  • 「年間1億冊以上」のカタログ、パンフレットを顧客に発送
  • カタログ会員の獲得⽅法は、「電話やWebでの直接の申込」「商品発送時のカタログ同梱」「書店でのカタログ販売・配布」「引越会社など提携先によるカタログ無料配布」など。チャネルに関わらず、年間購⼊顧客数は数百万⼈。また、ウェブ会員数は1,000万⼈以上
  • カタログ(ディノスおよびセシール)、TVショッピング(ディノス)、それぞれの売上が数百億規模

ディノス・セシールの組織構成は、⾐料、家具・インテリア、美容・健康など商品別の縦割り型です。私たちEC部⾨は、それに横串を通す形で会社全体のEC施策を統括しています。
ただし「EC本部には売上実績を計上しない」という仕組みを取っています。カタログを⾒た顧客がECサイトで注⽂した場合でも、売上実績はEC部⾨ではなくカタログ部⾨に計上されます。これはカタログ通販とECサイトのカニバリズム(共⾷い)を防ぐことが⽬的です。

データ分析は、すでにできていた

⽯川様は、マガシーク、cottaなどいくつかのECサイトを成功させた後、2016年にディノス・セシールに招聘されました。今回のKI導⼊の⽬的は、「ディノス・セシールで、これからEC仕込みの緻密なデータ分析を本格化させていく」ということでしょうか?

それは完全に違います。まず⼤前提として、ディノスセシールのカタログ通販、TV通販には、効果測定の壮⼤な仕組みがすでにあり、データ分析はとっくの昔に本格化しています。
この記事をお読みのEC関係者の⽅の中には、「データ分析は、紙媒体よりECの⽅が優れている」と思われている⽅もいらっしゃるかもしれません。私も⼊社前には、無意識にそのように思っていました。しかし、今は完全に認識を改めました。
たとえば、とある部⾨では年配の⽅も含め、全員がSQLを⽇常的に使いこなして、直接データベースをゴリゴリ操作しています。また、研究所で使うような重厚⻑⼤な分析ツールを使って効果測定している部⾨もあります。ディノス・セシールのデータ分析⼒は、私がこれまで在籍したEC企業を、最初から凌駕していました。
しかし冷静に考えると、それは当然のことでした。

カタログ通販は、データ分析の「気合い」が違う

なぜ「当然のこと」なのでしょうか?

ECとカタログでは、かかるコストがまったく違うからです。
例えばメルマガなどは、1通あたりのコストは1円以下なので、“数撃ちゃ当たる”で何度でも試せます。しかし、カタログ通販で、その感覚はありえない。紙は、制作でも発送でも多⼤なコストがかかる。年間1億冊を送付すれば、たとえば送料1冊100円なら100億円がふっ⾶びます。ここで数を撃ちすぎたら負け。買う気のない⼈にカタログを送っても、⾚字が増えるだけです。ヒット率を⾼め、ギリギリの精度で最適化するには、⾼精度の効果測定が不可⽋であり、その真剣さはECの⽐ではない。⾃分の中にあった『カタログ=アナログ』『紙は何かと無駄が多い』という考えは、⼊社後、完全に消え去りました。
コンテンツ制作もすごかった。あらゆるページのデザイン、配⾊、⽂⾔にいたるまで、全⾝全霊で作り込んである。だから⾒開き2ページだけで、軽く数千万円が売れるケースも多々あります。
そして、マーチャンダイズ(商品開発、またはMD)。とかく販促⾯が注⽬されがちな通販業界ですが、ディノス・セシールの真の強みは「商品開発⼒」です。お客様が欲しくなる、魅⼒ある商品を提供することができるのです。
⼊社してしばらくたったある⽇、⼩型ナイフを担当するMDに話を聞きました。すると、⼩型ナイフのネタだけで話すこと延々2時間。しかも内容が⾯⽩くて、深い。話を聞くうち、そのナイフが欲しくなるのはもちろんのこと、「なぜ⾃分は今までこのナイフを買わなかったのか。」と⾃責の念さえ沸いたほどです。社内にはそういうスーパーMDがゴロゴロいます。
マーチャンダイズ、コンテンツ、データ分析の3本柱で、カタログ通販を40年以上続け、1000億を超える売り上げを出し、⿊字化している。EC出⾝の私には、想像を絶する世界でした。

EC展開の指針

そこまで既存事業が強いのなら、逆にECの存在価値は何になるのでしょうか?

単純には「将来性」の問題があります。いくらカタログ通販が強いとはいえ、それが5年後、10年後も成⻑エンジンであるとは考えにくい。経営陣は、ECシフトの必要性を痛感しており、それが私たちを外部から⼊社させた理由でもあります。
2016年の⼊社時点でEC経由の購買は、すでに50%近くに⾄っていました。しかし、社内でECは今ほど重視されていなかった。今まではカタログを⾒て、電話、FAXで注⽂が来ていた、そこにホームページが加わっただけでしょ、という、つまり「レジの⼀つ」というような扱いだったわけです。
このような社内環境の中で、従来からある⾃社の強みを⽣かしながら、どのようにECを1つの「独⽴したお店」として積極活⽤させていくか。単純には「ECが得意で、カタログが不得意なこと」を伸ばせば効果的だといえます。KIなどの分析ツールを駆使したデータ活⽤という観点では、⼤きく次の4点を想定しています。

  • 1.「顧客の挙動データの解析」
  • 2.「コンテンツ、タイミングのパーソナライゼーション」
  • 3.「EC指向のマーチャンダイジング」
  • 4.「すべてのデータの融合、統合」

指針1. 「顧客の挙動データ」

「顧客の挙動データの解析」とは具体的には?

顧客の挙動とは、顧客が商品を「買う前の」⾏動のことです。
挙動データは、ECでは詳しくわかりますが、カタログではほぼわかりません。
ECでは、ホームページに来訪した顧客の滞在時間、訪問頻度、⾒て回ったページ、コンバージョンレートなどが、いわゆるアクセスデータ、ヒートマップなど各種解析を通じて、詳細に理解できます。しかし、カタログでこうした詳しい分析は不可能です。
この、ECでは⾃明である顧客の挙動データを、カタログ作成部⾨に適切にフィードバックすれば、さらに顧客の⼼に響くカタログが作り出せます。
カタログ顧客の挙動を知るために、今でもQRコードを載せることがあります。今後はアプリの機能追加によって、カタログを⾒ている顧客がどんな商品にいつ関⼼を持ったかがわかるようにします。こうした「カタログ上の挙動データ」は、逆にEC側の私にとって⾮常に興味深いものです。

指針2. 「パーソナライゼーション」

「コンテンツ、そしてタイミングのパーソナライゼーション」とは?

パーソナライゼーションも、「ネットなら簡単、カタログでは困難」という分野です。Webサイトなら、顧客の嗜好や属性に合わせてコンテンツをダイナミックに変えるのは難しくない。⼀⽅、カタログは、3ヶ⽉〜半年をかけ丹念に制作し、⼀気に配送し、⼀気に売上を上げるもので、本質的に「固定的なマス媒体」です。すべてのトリガーは事業者側が引くもので、パーソナライズという発想が⼊る余地はありません。
しかし今後はWeb上の挙動データを使えば、紙媒体でのパーソナライゼーションも可能になります。たとえば、ECサイト上で特定の産地のワインをよく閲覧している顧客がいたとする。そのとき、この顧客に「○○さんにぴったりのワインがあります」と知らせれば興味を引けるでしょう。
ただし、このタイミングでメールやLINEを送るのでは芸が無いと思うのです。ワインなのに、それでは軽くて、埋もれる、⾒過ごされる。そうではなく、たとえばディノス・セシールのコンテンツ制作⼒を⽣かす形で、ある程度リッチな⼀枚物のチラシをカラーで印刷し、それをダイレクトメールとして郵送する。このように、顧客の挙動データを、メール配信システムではなく、紙のプリンタに送る。こうした形を取れば、ディノス・セシールの「らしさ」を⽣かす形で、他のワインECサイトと差別化できます。

指針3. 「マーチャンダイジング」

「EC指向のマーチャンダイジング」とは?

今後は、EC側で集めたデータを駆使し、それを商品開発、マーチャンダイジングに展開できればと考えています。

「データを提⽰することで、社内の最強部⾨であるマーチャンダイジングを説得していく」ということでしょうか?

データのみに頼って説得する、ということではないですね。というのも、さっき話したナイフのMDをはじめ、社内のMD⼒は当社の売りでもありますし、そのすごさは実感しているので、そのような⽅々に対し、「データが⽰すところによれば〜」のような説得をする気はありません。
そうではなく、データ分析ツールは、最終的にはMDのみなさんに「渡して」しまいたい。そして販売状況や顧客の挙動データ、予測分析など⾃由⾃在に分析、解釈していただき、それを⼀つのヒントとして、すごい商品を開発することに役⽴ててもらえたらと思っています。
私たちができるのは、KIなど「使える道具」をお膳⽴てすることぐらいです。

指針4.「誰も⾒たことのない⾵景を⾒る」

「すべてのデータの融合、統合」とは?

社内ではとかく、カタログか、それともWebか、と媒体別に発想しがちです。しかし、媒体の違いは顧客には関係ない。顧客にとっては「ディノス・セシール」というお店が⼀つあるだけです。顧客は本当にさまざまです。電話で注⽂するのが⼤好きで、好みのオペレータを指名して、おしゃべりを楽しみながら買い物を楽しみたいという⽅もいます。あるいは、スマホはバリバリ使えるけど、カタログを読みながら、欲しい商品のページに付せんを貼って、それから電話で複数個を⼀気に注⽂する⽅がWeb注⽂より速い、という⽅もいます。
顧客はネットとカタログを⾃由に⾏き来しています。できればその⾏動様態を、カタログ、テレビショッピング、ECサイトの挙動データ、販売データの垣根を取り払う形で、総合的に把握したい。これが実現すれば「社内で今まで誰も⾒たことのない⾵景」が⾒えることになります。どんなデータモデルなら良いのか、今の段階で⾒当もつきませんが、取り組む価値のある分析です。

KI導⼊の経緯

今回、ディノス・セシールがKIを導⼊した経緯を教えてください。

キーエンスが利益率の⾼い超優良企業であることは知っていました。じゃあ、その裏にどんな仕組みがあるのか、1⼈のマーケターとして以前から興味がありました。そんなある⽇、交流会でキーエンスの⽅と知り合う機会があり、いろいろ質問しました、すると⾼収益の裏には、念⼊りなデータ分析があるという。意外でした。データサイエンティストやソフトウェアの開発者が練り上げた独⾃の仕組みがあり、それを活⽤して、⼤きな成果を上げていると。そのデータ分析ソフトウェアが、近々、外販を開始するという。そこまで聞いて思わず、「すみません、それ売ってほしいんですけど」と⾔ってしまいました。そして発売とほぼ同時に導⼊したわけです。

先⾏ユーザーとしてのアドバイス

KIを導入検討中の企業に向けて、先行ユーザーとしてのアドバイスをお聞かせください。

データ分析に劣らず重要なのが「⾃社の根幹にある強み」を知ることです。それを知るには、私がナイフのMDに2時間話を聞いたように、現場に直に話を聞くのが⼀番です。あれこれ考える前に、まず社内のスーパー社員の話を、2時間、聞いてみる。そうすれば、⽴体的で⾎の通ったデータ分析が可能になると考えます。やってみる価値は⼗分あると思いますよ。

株式会社ディノス・セシール

「ECサイト、カタログ通販、テレビ通販のデータをKIで統合解析することを目指しています」

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