KIによるデータ分析は、証券営業担当者の行動の拠り所、参考材料を得るために活用しています。
まず「顧客接触タイミングの最適化」という用途。弊社の営業スタイルは通常、営業担当者がダイレクトにお客様とコンタクトを取る対面営業形式です。そのための主なアプローチ手段はどうしても電話やメールになるのですが、そうなると営業担当者がそれらの行動を起こすタイミングがかなり重要になります。なぜならお客様が投資に関するアクションを起こそうという気になっている時に、コンタクトが取れていなければ営業効率が大きく低下するからです。では「いつ」連絡するのがよいか? それはやはり、株価がその年の最高値、最安値をつけるなど大きな値動きがあったとき連絡するのが適当です。
お客様の普通の反応は「安いなら買おう、高いなら売ろう」ですが、逆に「高いなら買おう」という方もいらっしゃり、相場観は人それぞれです。ここでKIを使って、お客様の投資傾向や知見を事前に得て、その上で新高値や新安値がついた銘柄を保有しているお客様を抽出し、そのリストを営業担当者へ展開する、そのような活用です。
次にAFE(機械学習)機能を使った「潜在休眠顧客の分析」。将来、休眠する可能性のあるお客様について、KIを活用してスコア化、リスト化していき、それを参考にリスト上のお客様に対して、優先的にコンタクトしていきます。
リストは休眠化する可能性の程度に応じて0点から30点までスコア化してアウトプットされます。そうなるとこのスコアにおいて、休眠する・しないの分岐点がどこかに存在するわけです。そこで試しにこの分析を東京支店のお客様に対しておこない、リストを現場の営業担当者に見てもらったところ、概ね6~7点周辺が分岐点になっているようで、リストに掲載された個々のお客様スコアの並び順は「自分たちの営業感覚にかなり近い」という意見が多数を占めました。
時々、予想外のお客様が入っていることもありますが、それもよく精査してみると、結局は納得感のある並びなんですね。この件で、KIの社内での信頼性が大きく向上しました。この分岐点上のお客様に対して、年末年始やイベントなどのタイミングをみて優先的に連絡、訪問して顔を見せることを東京支店の営業担当者に指示しました。
潜在休眠顧客のスコア化は3カ月に1回の頻度でおこなう予定です。コンタクトを重ねたお客様のスコアがその後、上がっているのか下がっているのか確認し、PDCAを回します。現在では各店の支店長にもアカウントを付与し、現場の営業担当者には、支店長から直接分析内容を伝えてもらっています。
この他、AFE分析によって鉄鋼や船舶、自動車など長期的に堅実な大型優良銘柄を保有しているお客様は、休眠化しにくい傾向があることが分かりましたので、こうした情報についてもこれからの営業活動に生かしていきたいと考えています。
さらに今後は「約定金額を大きくするための分析」にも取り組んでいきます。約定金額が大きいお客様にはどんな傾向があるのか?過去データを分析し、そこで得た知見をもとに、高確度の見込み顧客に接触していきます。