沖縄労金は、その理念の中で自らを、「〈ろうきん〉は、働く人の夢と共感を創造する協同組織の福祉金融機関です」と規定しています。また「会員がおこなう経済・福祉・環境および文化にかかわる活動を促進し、人々が喜びをもって共生できる社会の実現に寄与すること」を活動目的と定めています。
この理念を実現するには、まず会員の状況、ニーズをよく知る必要があります。会員が「今どうであるか、どんなことにお困りなのか」を詳しく知り、その上で一人一人に寄り添った提案、企画をおこなっていきます。
KIによるデータ分析は、この「会員を知ること」の新たな手段です。沖縄労金の主要な業務データはすべて、全国13労働金庫共通の業務システム、データベースに保管されています。KIを使い、このデータを詳しく分析していきます。
具体的には、会員の「属性情報(口座開設のときにわかる顧客情報)」、「預金情報(口座でのお金の出し入れ状況)」、「契約情報(住宅ローン、教育ローン、投資信託などの契約状況。ローンの場合は返済状況)」などを、諸法令に基づく形で匿名的にデータ分析し、どのような金融商品、企画が、どのような属性、状況の会員に適しているか、その知見を得ます。企画担当者や営業担当者は、その知見をもとに企画を立て、会員に接触し、そこで得た情報、反応を再びデータ化し、さらに分析を加える。そのようにPDCAを回していきます。
また「ATM設置場所の最適化」という目的もあります。労働金庫では一般に、会員が他行ATM、コンビニATMなどで預金を引き出した場合、その手数料を会員にキャッシュバックするというかたちで、「引き出し手数料ゼロ円」を実現しています。しかし、あまりにも利用が多い地域では、自庫ATMを設置した方が、コスト最適化につながる場合があります。他行ATMからの利用状況に関するデータを分析し、新規ATM設置の検討材料にしたいと考えています。
この他、近年はコロナ禍により、顧客と直接会って情報収集することが困難になりました。コロナ禍が収束した後も、顧客対応のオンライン化はさらに進むと予測されます。こうした外部環境の変化に対応するためにも、データ分析による顧客像の把握という新しい方法を、早期に庫内に確立する必要があります。
沖縄県労働金庫
沖縄県労働金庫 経営統括部 部長 宇地泊 信司氏、與那嶺 凡子氏に、KIを導入した経緯と目的について詳しく聞きました。
「次世代のDX人材育成を狙い、KIを導入しました」
沖縄県労働金庫
沖縄県労働金庫は、沖縄県那覇市に本店を置く労働金庫です。福祉金融機関として、沖縄県ではたらき、くらす県民の生活、福祉、文化の向上に貢献しています。
預金残高 | 3,018億円 |
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融資残高 | 2,011億円 |
団体会員数 | 454会員 |
間接構成員数 | 96,272名 |
店舗数 | 12店舗 |
※この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数で記述しています。
KI導入の目的
沖縄県労働金庫(以下 沖縄労金)では、KIをどう活用していきますか。
沖縄労金ではKIを、「福祉金融機関として、会員一人一人の生活、ニーズをさらに深く理解すること」「今後、数年をかけて組織全体をDX化していくための人材育成」の2点を目的に導入しました。
目的1. 「データを通じた会員の生活状況やニーズの把握」
目的1. 「会員一人一人の生活やニーズを深く理解する」とは具体的には?
目的2. 「DX人材の育成」
目的2. 「組織全体をDX化、そのための人材育成」
今回のKI導入では、先ほど述べた短期的な目標のほか、「沖縄労金の組織全体をDX化する。そのためのDX人材を庫内に養成する」という中長期的な目標を掲げています。
KI導入に際し、まず部門横断的なプロジェクトチームを発足させました。具体的には、全庫7部門のうち、監査部門を除くすべての部門、つまり経営統括部、営業推進部、融資統括部、業務統括部、総務人事部、リスク統括部の6部門から、一人ずつ担当者を選抜しました。メンバーの多くは課長職、部長代理職、つまり現場視点と管理職視点をあわせ持ち、将来は沖縄労金を担っていく人材です。まずは、このプロジェクトチーム内で、各部門の課題を持ち寄り、それをKIのデータ分析でどう解決していくか、具体的に議論、検討していきます。
ここで出された結論、方針を、KIを使って分析、具現化する作業は、当面、私たち経営統括部が担当します。とはいえ、KIは操作が簡単なので、将来的には、各部門が直接自分でKIを操作し、自分の課題は素早く自分で分析するという方向で検討しています。こうして庫内すべての部門に、データ分析の手法、文化を浸透させ、データを使った業務PDCA回転を日常的なものとし、最終的には沖縄労金の組織全体を「各部門、現場からDX化していく」、そんな構想を持っています。
データ分析に着目した背景
沖縄労金がデータ分析に着目するようになった背景を教えてください。
データ分析については、数年前から課題意識がありました。自分たちは規模が小さい、人数が少ない、さらに福祉金融機関としての労働金庫には「営利団体に融資してはならない」という活動上の制約もあり、だからこそ効率的、効果的に業務を進めていく必要がある。
特に現場の営業店舗から、効率化を求める声が上がっていました。沖縄では、いま住宅ローン需要が上向いています。共働き世帯の多さ、子供の多さを考えても、まだ潜在的な需要が見込める。このニーズに的確に応えていくためにも、やみくもに当たるのではなく、根拠を持ち、絞り込んで会員に接触したい、そんな要望が現場から上がっていました。
こうした課題を解決するべく、過去からBIツールなどを導入しています。しかし、それら製品はいずれも「現状把握」の域を超えるものではなかった。その分析をもとに「では、これから具体的にどうしていくのか?」という、動態的な分析はできていませんでした。
そんな時、キーエンスからKIの案内がありました。キーエンスといえば高い営業利益率で知られている、効率的・効果的に動けている会社です。そしてKIは、キーエンスが自らの営業活動のノウハウをもとに作ったツールだという。送られた資料を読みながら「これは今までの分析ツールとは違う」と感じ、早速、オンラインでのデモを依頼しました。デモには、経営統括部と営業推進部で参加しました。
導入までの経緯
デモを見ての感想はいかがでしたか。
従来のツールと違い、行動につながる具体的な分析結果が出せる道具だと感じました。使い方も簡単で、私たち専門外の人間でも使いこなしていけそうです。当初は、営業系部門での活用を想定していましたが、これなら人事や融資管理など他部門でも広く使えると感じました。同席した営業推進部の担当者からも、これを使えば、自分たちの仕事の幅が広げられる、より充実した仕事ができるとコメントがありました。
部内に、PDCA直結型のデータ分析の素養がある者はいません。しかし、KIは、単に製品が提供されるだけでなく、キーエンスのデータサイエンティストによる伴走型の実地サポートがある。つまり、仕事の問題を解決しながら、同時にキーエンスの優れたノウハウを学び、取り込んでいける。上手く活用していけば、特定部門の業務改善に止まらず、組織全体のDX化につなげられる、これは化けるかもしれない、と感じました。
その後、日を改め、理事長や役員など経営層向けのデモを実施しました。ここでも「チャレンジしていこう、組織を変えていくべきだ」と好反応がありました。これを受けて、導入・運用体制について、全部門横断のプロジェクトチームのことも含め、経営統括部で起案、上申し、2021年9月にこれが認められ、本導入に至った次第です。
まずはプロジェクトチームによるキックオフをおこない、その後、データサイエンティストのサポートを受けながら、活用を深めていきます。
先行ユーザーからのアドバイス
現在、KI導入を検討している企業に向けて、先に導入した立場から、アドバイスなどあればお願いいたします。
今回のKI導入について、庫内では「他の労働金庫ではどうなの?」という慎重論もありました。当時はまだ、メガバンク・地銀・信金での導入実績は多数あるものの、「労働金庫」となると「導入済み」はゼロ、「導入検討中」は弊庫を含む少数、という状況だったので、「ならば、もう少し様子を見たほうが」という意見がありました。
しかし経営統括部としては「これは自らを変えようという話だから、最初でいい。一番最初に始めて、一番最初に変わる。そしてオンリーワンになる。それでいい。それがいい」と考えました。
沖縄県労働金庫がひきつづき、沖縄県ではたらくみなさまに選ばれる金融機関でありつづけるためにも、他とはひと味ちがう、お客様一人一人に寄り添った提案をおこなう必要があります。「労働金庫はいいね、気が利いてるね」と言ってもらえるよう、自らを変える、そのためのデータ分析、DX人材づくり、これをKI活用を通して実現していきます。
キーエンスには引き続き、優れた製品、技術、サポートを通じて沖縄労金の取り組みを、支援いただくよう希望いたします。今後ともよろしくお願いします。
沖縄県労働金庫
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