住友金属鉱山シポレックス株式会社

住友金属鉱山シポレックス株式会社 栃木工場 製造課 課長 中野 真輔氏、同課 大木 歩氏に、KIを導入した経緯とその効果について詳しく聞きました。

「製品品質向上のためにKIを活用しています。品質向上の取り組みの中で、歩留まり向上も実現しました」

住友金属鉱山シポレックス株式会社

住友金属鉱山シポレックス株式会社は、JIS工業製品名でALC(=Autoclaved Lightweight aerated Concrete)と呼ばれる軽量気泡コンクリートのパネル状建材や、免制震材料の製造、販売を主な事業分野とする企業です。創設昭和37年。

※この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数で記述しています。

軽量気泡コンクリート、シポレックスの品質管理にKIを活用

住友金属鉱山シポレックスではKIをどのように使っていますか?

KIは、栃木工場で品質管理に活用しています。用途は品質管理。具体的には、製造の際に製品に発生する品質のばらつきの発生原因を特定して、そのばらつきを極小化するために使っています。

住友金属鉱山シポレックスでは、パネル状の建材である軽量気泡コンクリートパネル(ALC)を製造しています。社名にもなっている「シポレックス」は当社製品のブランド名です。シポレックスは、内部に気泡を含むことにより、軽量性と高強度を両立し、耐火性、断熱性にも優れています。マンションや住宅、工場、倉庫などの壁材、屋根、間仕切り壁、床などで使われます。

シポレックスの製造工程は、大きく分けて

  • 1工程:「パネル内部に埋設する補強用の鉄筋カゴづくり」
  • 2工程:「材料混練によるスラリー化・型枠へのスラリー流し込み・発泡・硬化・ピアノ線による製品寸法への裁断・高温高圧蒸気養生」
  • 3工程:「製品寸法への仕上げ加工・検査」

に分けられます。現在KIは、主に第2工程の「材料~発泡」の品質管理に活用しています。また、第2工程での活用を進めながら、各工程全般に活用範囲を広げている最中です。

KIを導入した時点で、工場にはすでに生産条件に関するデータベースがあり、ある程度のデータはすでに蓄積されている状態でした。そのデータベースにKIを接続し、各種データの解析をおこないます。

KIの導入とデータ活用により、すでに品質上のばらつきが生じる原因をいくつか特定することができました。これにより歩留まりの向上にも繋がっています。

導入後すぐ、障害の原因を特定

たとえば、どんな品質のばらつきの原因をどのように特定できたのでしょうか?

一例をあげると、「シポレックス内に含まれる気泡の分布や気泡サイズの均質化の阻害要因」という問題について、理解を深めることができました。この時は、KIの分析を通じて、生産条件と気泡の状態との間に具体的な相関があることを特定できました。

以前からいくつかの要因は社内でも把握しており、共通認識を持って管理していました。しかし自然原料が多くを占めるので、それらの品質は日々変わります。「例えばAの条件とBの条件が怪しい」までわかっても「では、現時点で最も適切な条件はどの組み合わせなのか」は明確にならず、関連するであろうパラメーターが多いこともあり、細かい部分までは手間と費用を伴なう具体的な行動に踏みこめませんでした。

しかしKIによる詳細分析を通じ、「その時々の適切な操業条件」を特定することができました。これを踏まえ、各種の生産設備を調整し、最終的に臨機応変に調整する体制を整えました。これにより気泡のコントロール性が向上しました。

このように、さまざまな操業データをKIで分析して原因を探ることで、歩留まりも向上しています。改善率はまだ期待しているところまで到達していませんが、費用対効果としては成果が出ていると考えています。

KI 導入前の課題

KI導入前は、品質管理をどのようにおこなっていたのですか?

JIS製品なのでJISの規格値に収まることが絶対条件です。また、ISO9001の認証も頂いており、日々システマチックに対応しています。しかし、さらに上を目指した品質改善の取り組みを進める必要性を感じていました。従来は、エクセル解析が主な手段でした。何か障害が起きたときは、原因を経験則で推定する。それを元に、システム担当者がデータベースから情報を抽出する。その後、エクセル解析する、といった手順です。結構な手間と時間がかかるため、広範囲に渡る、かつタイムリーな解析は気軽にはおこなえませんでした。

KIについては、もともとキーエンスから営業部門の方へ紹介を頂いていました。KIについての詳しい話を聞く過程で、工場では既に操業データがある程度整っていることもあり、先ずは栃木工場の品質管理に適用してみてはどうか、との話になり、導入が決まりました。

KIをどのように工場内に導入していったか

その後、KIをどう使いこなしていきましたか?

KIは、直接データベースに接続し、操作します。するとデータが解析されて「●●と××が問題かもしれません」とヒントが提示されます。また、解析結果はグラフ化されて提示されます。担当者は、そのヒントを念頭に調査の深掘りを進めます。こうした手順に変わることで、品質のばらつき要因解析が大幅に効率化され、気軽に試行錯誤できるようになりました。

運用を始めてからは、解析精度の向上を図って、データの精査・変更・追加を随時おこなっています。またKI活用に関する問題点の洗い出し、方針策定をおこなうために、毎週社内会議を開いています。さらに社内会議での協議内容や進捗に関して毎月1回、キーエンスの担当データサイエンティストと話し合いをおこない、KIの活用方法に関する疑問の解消や解析手法の修正などを実施しています。

製造課のKI担当者はデータ分析そのものについて特に素養はなく当初は不安を抱えていたのですが、始めて見れば、それほど専門知識が必要になることもない。エクセルが使えるIT能力があれば、KIは大きな苦労なく使いこなせる、そう感じました。

専門知識がなくても使いこなせる

これまで使ってみてわかった、KIへの評価をお聞かせください。

KIは以下の4点が優れていると感じます。

  • 1.「専門知識がなくても使いこなせる」
  • データベースの情報は、無味乾燥な数字と文字列の並びです。一目で理解するのは難しく、自力で解析するには知識と労力が必要になります。しかしKIを使えば、ある程度までは自動解析してくれます。

  • 2.「画面のわかりやすさ」
  • KIは画面表示がとてもわかりやすい。KIがデータをどう解釈し、どう解析しているのか、なぜそれが問題となりうるのか、各種情報がアイコンやグラフで表現されます。画面のわかりやすさはエクセルを上回る感があります。また直感的な画面は、通常ではデータに接しない社員に、品質管理状態の現状、問題点とその根拠、改善点を説明するとき役立ちます。

  • 3.「データ選定の視点が深まる」
  • KIの活用を通じ、どんなデータをどう取捨選択し、どう改善につなげるか、その視点が深まりました。ただデータを投入するのでなく、より深く考え、選び取っていく、そんな姿勢が醸成されています。

  • 4.「既存データベースからのデータ抽出の必要がなくなった」
  • 従来は、データ解析しようと思えば、まずシステム担当者に依頼し、工場内のデータベースから必要なデータを抽出してもらう必要がありました。しかしKIはデータベースと直接つながっているので、そうした手間を要さず、気軽に解析ができます。私たち製造課にとっては、依頼の手間がなくなり、データを受け取るまでの時間の短縮につながりました。一方、システム担当者にとっても、データ抽出に時間と手間を取られません。お互いにメリットを実感しています。

サポートへの評価

キーエンスのサポートへの評価をお聞かせください。

何か困ったことがあれば、気軽に相談させて頂いています。

私たち製造課は、多変量解析の手法やKIの操作方法について、あまり知らない状態から始めました。しかしKIの操作方法、データの編集方法など、1を聞けば10返ってくるほどの丁寧さで教えて頂けました。

具体例をあげると、品質管理の詳細分析を目指すあまり、プロジェクトを多く作りすぎ、結果、時間が足りずに困っていたことがありました。その際もキーエンスから、円滑運用のための機能や運用方法などピンポイントで助言があり、作業を大幅に効率化できました。

定例会議でも、データ精査について、我々が見落としていた点の指摘を頂いたり、作業が遅れがちなとき、適度に号令をかけて頂けるなど、こちらの目標を把握した上で、その実現のための、しっかりした支援が常にあります。サポートは手厚く、とても満足しています。

今後の展望。他工場、営業部にも展開

今後の展望をお聞かせください。

今回KIを使って、ある程度の成果を得ることができました。しかし、まだ解析していない品質項目も多く残っており、データ分析・改善は完了とは思っていません。KIによる分析は不断の継続が必要だと考えます。

というのも、私たちが扱うのは個体差がある自然原料であり、主原料の一つである珪石ひとつとっても鉱脈が変われば品質も変わります。また、原材料を混練したスラリーを扱うには、生産条件がきわめて重要になりますが、ここでも原料や生産の諸条件の差異により、同じ配合条件でも、品質がばらつく要因やその発生率が異なってくるという困難が生じます。

こうした不安定要素を考慮したとき、品質管理のばらつき要因の解析は「ここまでやれば終わり」とはいかず、分析を日常的に遂行することが必要です。日々、刻々と変化する状況を把握し、都度、的確に対応していく姿勢が重要になると考えます。

栃木工場内では、今後データ分析の推進を通じて、さらなる品質管理、歩留まり率向上を狙います。現状は素材品質へのばらつきの発生要因解析を中心に活用していますが、今後は他の工程、他のデータセットでも積極活用していきます。たとえばお客様から注文を頂いた多様な寸法のALCパネルを型枠内に最密充てんして生産することで生産効率を上げることができますが、ここにもKIが活用できると見込んでいます。

このように、多くの要分析項目があるので、一つ一つKIを活用し、改善していきたいと考えています。

現在、栃木工場につづき、三重工場と営業部門へのKIの展開を進めています。三重工場ではすでに工場内の定例会議、キーエンスのデータサイエンティストとの協議もすでに始まっています。栃木工場とは製造プロセスも似ており、将来的にはお互いに解析ノウハウを交換できるようになると期待しています。

住友金属鉱山シポレックスでは今後もデータ分析を通じた業務改善を続けていきます。キーエンスにはそうした当社の取り組みを優れた技術、製品、サポートを通じて後方支援頂くことを希望します。今後ともよろしくお願いします。

住友金属鉱山シポレックス株式会社

「製品品質向上のためにKIを活用しています。品質向上の取り組みの中で、歩留まり向上も実現しました」

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