株式会社イーウェル

株式会社イーウェル ヘルスケア企画本部 データアナリティクス部 副部⻑ 泉 亜矢子氏、船本 幸伸氏に、「KI」を導入した経緯とその効果について詳しく聞きました。

「データマネジメントを全社的な重要課題と位置づけ、組織的に取り組んでいます」

株式会社イーウェル

株式会社イーウェルは福利厚生のアウトソーシング企業です。『WELBOX』をはじめ、企業の福利厚生や従業員と家族の健康支援、健康経営に関する各種サービスを提供しています。顧客は大手の自動車会社、化粧品会社、建設会社など多数。

従業員数 1,167名
設立 2000年10月

※この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数で記述しています。

KIを活用した⾃社サービスの価値向上、データマネジメントを推進

イーウェルでは、「KI」をどう活⽤していますか?

主に「顧客にとっての当社サービスの価値向上」を⽬的に活⽤しています。

データ分析を通じ、顧客の課題解決の糸口を見つけ、その打ち手として当社のサービスや、その活用方法を提案し、サービスの導入効果をより感じていただくことで、当社の価値向上を図ることが目的です。その姿勢の表れとして、私たちが所属する旧称「マーケティング部」は、2022年4⽉より「データアナリティクス部」に名称を変更しました。

各種サービスの利用促進など、マーケティング業務も引き続きおこないますが、データ分析・データ利活用は、「当社の企業価値向上に寄与する重要な⼿段の1つ」として、私たちの主要業務は一つレイヤーが上がった「データ分析」となりました。

データ分析は、顧客価値の中核

「データ分析を通じて自社サービスの価値を⾼める」とは、具体的には?

イーウェルは2000年10月に設立し、福利厚⽣サービス『WELBOX』を⽴ち上げ、その後も健康活動を管理するツール『KENPOS』、従業員のウェルビーイングを可視化する組織診断サービス『ウェルスコア』、ポイントを使って評価や感謝を伝える社内コミュニケーションツール『インセンティブ・プラス』など、各種サービスを追加展開してきました。

ヘルスケア領域と職域のサービス、それぞれのデータを横串で分析することで、優先すべき顧客の課題がより広く深い視点で可視化されます。さらにデータを用いた客観的な分析結果からその課題を解決する打ち手を提案し、その効果も定量的に見える化して、顧客と共に目標まで伴走していくことが、顧客にとっての価値になる、という発想です。

もちろん「KI」を活用して導いた分析結果をどう解釈するかについては、顧客の課題や背景、環境などをよく知っている営業担当者とよく話し合いながら、現実的で、より筋の良い提案にしていくことも重要だと考えます。

当社の主要顧客は従業員数が数千⼈から数万⼈の⼤企業です。営業担当者は、先⽅の⼈事・健保組合担当者向けに、各サービスの利⽤状況など各種分析レポートを報告しています。

そのレポートを使って、次回施策の企画を検討されることを想定し、分析担当者も質の高い分析・次のアクションに繋がる分析がおこなえるよう常に努⼒しています。

しかし「KI」導入前には、サービスごとにデータが個別に管理され、サービスをまたがった全体最適の分析ができず、イーウェル全体で増え続ける各種データを活かしきれていないと感じる各部門の担当者が多く現れました。

データ分析の全体最適の必要性

「各種データを活かしきれていない」とは、具体的には?

以前は、サービスごとに最適化されたデータの範囲でのみ分析し、レポートを作成していましたが、サービスをまたいで相関関係を分析すると、新たな解決の糸口を発見できたり、施策効果を客観的に把握することが可能になるのでは?と考えました。しかし、サービスを横断してデータを取り扱い、分析をおこなう部門が無い上に、「膨大なデータから相関関係を導く土台がなかった」のです。

⼈⼿による分析の限界

「相関関係を導くための土台がない」とは、具体的には?

「⼈智と⼈⼿の限界を超えて分析する道具がなかった」ということです。たとえば、単純に業界平均と⽐較したその会社の位置づけ程度なら⾼度なデータ分析ツールを使わなくてもExcelなどで、⼈⼿だけでも作れます。重要なのはその先です。

たとえば、⾃社が良くない位置にいた場合に、「そうなのか」で終わるのではなく、今後、それを改善するには何をすればよいか。「では、次はこうしよう」まで行きつくための示唆と提案までする。そこまで深めていかないとデータを分析した意味がありません。

社内に蓄積されている⼤量のデータを活用し、広く深く分析するには、部⾨、個⼈の努⼒だけでは限界があり、やはり全社全部⾨にまたがる道具が必要でした。

その課題意識のもと、データ分析ツールの情報収集を開始し、KIのことを知りました。また検討を進める過程で、実はこの全社全部門にまたがる道具は、「多くの部⾨が待ち望んでいたもの」であることもわかりました。

現場の反応

「その取り組みや道具が多くの部門にも待望されていた」とは?

データ分析ツールの検討を進める中で、その話を聞きつけた地方支店や他部門の社員から、「会社全体のデータを横断的に分析する取り組みですか?もしそうなら、自部門のデータも分析してほしい」という声が相次ぎました。つまり、先ほど述べたサービスごとの部分最適の限界は、現場も痛感していたということです。

KIの導⼊後、最初は少し苦戦しましたが、KIは使いこなせるようになるほどに価値を増しています。徐々に、各項⽬やサービスの関連性を横断した分析が形になっていきました。

たとえば、従業員のウェルビーイングを可視化する組織診断ツール『ウェルスコア』では、仕事・プライベート・健康など、5つの観点からウェルビーイングの度合いを定量化していますが、「仕事スコアが⾼い⼈」は、「『WELBOX』で無料eラーニングの利用をしたことがある人」や「健康スコアが高い人」の割合が高く、『 KENPOS』に記録されている1日の平均歩数が6000歩以上」である人は「健康スコア」も「仕事スコア」も高い傾向となる、など。従来、勘と経験から「そうだろう」と思われたことも含めて、⾯⽩い関連性を伴って客観的に把握することができるようになってきました。

さらに、各目標の「中間指標」を設定しやすくなるという効果も⽣まれています。たとえば、人事の⽅が社内でウォーキング⼤会を実施した効果を測定する場合に、短期的に測定が困難で因果もわからない「医療費の削減」を指標とするより、『ウェルスコア』の健康スコアを中間指標とし、効果をこまめに観察し、PDCAを回す方が早く知見もたまりますし、費用対効果が見やすくなります。こうしてデータ分析を駆使して中間指標を設定できることで、提案の幅がぐっと広がり、お客様に喜んでいただけます。

このようにKIを導⼊し、さまざまなデータの関連性を見いだそうと分析は進んでいきました。しかし、しばらく進めていくと、新たな問題が浮上してきました。

データの不揃いの問題

どんな問題でしょうか?

「分析されるデータ、それ⾃体の問題」です。

各サービスのデータをかき集め、横断的、総合的に分析しようとしたものの、その過程でサービス間のIDが紐づかないだけでなく、「顧客リストの重複」「全⾓・半⾓の混在」「情報の⽋損」「データの信ぴょう性」「⼊⼒が徹底されていない(空⽩多数)」など、これらのクレンジングに膨大な時間がかかり、肝心の分析を数多くこなせないなど、分析担当の頭を悩ませる問題が噴出しました。元のデータを整備しない限り、分析できないテーマも多くありました。KIにはデータを前処理する機能や、簡単にデータ連結する機能もありますが、そもそも「各サービスで蓄積されるデータをどう管理し、活用できる形にするのか」を検討し、ルールを整備する必要がありました。

どうしたものかと困っていたところに、キーエンスの担当データサイエンティストから「データマネジメント」という概念を教えてもらったのです。データマネジメントとは「データを、経営戦略を決定する上での重要な資産と捉え、意思決定のために常時利⽤可能な状態に維持・改善するという概念」です。

データマネジメントは、⼀般的に「重要だが、緊急性が低く⾒える業務」と思われがちです。重要性も緊急性も⾼い仕事なら、優先的に進められます。ただ、「重要だが、緊急性の低い仕事」は、「その問題を解決しなくても、⽇々の業務は何とかなる」ので、現状維持や惰性に流されやすい業務です。

ところが、この「データマネジメント」や「データガバナンス」の必要性を社内の複数の人に説明したところ、「データマネジメントはやるべき」「やりたいと思っていたが手を付けられずに今日まで来てしまった」「⾃分たちも協⼒する」という賛同がありました。今から地道なデータ整備を一歩ずつ進めるか、見ないふりをするかでは、将来の差が⼤きいということが、容易に想像できたのだと思います。そして、経営層からも「データにまつわる課題解決は、計画的に推進⼒を持って進めてほしい」と⽀援があり、こうしてデータマネジメントにも着⼿、遂⾏しています。

「⾛りながら、データの課題を記録する。整理する」が最も効率的

データマネジメントの取り組みは、どのように進めているのですか?

まずは「データアセスメント」から始めました。実際の作業は地味なもので、ひとことで⾔えば、「データ分析のついでに、データにダメ出しをして、記録する」ということを繰り返しています。キーエンスのデータサイエンティストのアドバイスを基に、アセスメントシートの形式や⼿順を決め、我々の中で⽇々改善を進めています。

重要なのは、「汚いデータでも、とにかくまずは分析を始めてしまう」ことです。「最初にデータを完璧にしよう。データ分析はそれからだ」という発想では、おそらく着⼿すらできず、問題は先送りされつづけていたでしょう。

そうではなく、データに不備があろうがなかろうが、とにかく分析を始める。逆説的な話ですが、実際に分析しないことには、結局データの不備はわからないからです。データの不備を認識しながら、どんどん分析を進めていく。⾒つけたデータ不備は、具体的、体系的に記録を残すとともに、優先度の高い案件には担当を付け、他部門と調整や整備をおこなっています。そうすると、⾃社のビジネスにとって必要な「データ整備の課題」が、効率的に抽出、解決されます。

もちろん並⾏して、仕組みとしてデータ不備が発⽣しにくくなるように、データの⼊⼝の部分も改善していきます。この解決の仕組み作りについては、社内のIT部⾨と連携しながら、進めています。以前から、IT部⾨でも複数の開発案件が進む中、データマネジメントの観点では課題に感じつつも有効打が無く、先送りにされていました。今は、我々が分析をしながら抽出した⽣々しい課題を基にして要件定義を進められるので、必要な範囲で、地に⾜のついた仕組みを構築できそうです。

このように、2〜3年かけて、社内データの整理と⼊⼒の仕組み作りが進んでいくと、当社のデータの資産価値も、顧客に提供できるデータ分析の品質も向上していくと思っています。

先⾏ユーザーからのアドバイス

KIを検討している企業に向け、先に使っている⽴場からアドバイスをお願いいたします。

今回、「データマネジメント」という概念は、キーエンスのデータサイエンティストを通じて認識しました。⾃分の抱えている課題やストレスを具体的な「⾔葉」で認識することは意外に重要です。もやもやしていた問題が、「⾔葉」によってはじめて明確になり、解決への意志も⽣まれ、社内提案もしやすくなりました。キーエンスのデータサイエンティストは、データ分析の⼿法だけでなく、こういったデータをビジネスに活⽤する取り組み全般について、深い⾒識や知⾒を持っているので、そういったアドバイスを基に、⾃社の組織を変えていけると、効率がよいと考えます。

また、こうしたデータマネジメントのような課題は、現場から課題提起することが⼤事だと思います。普段、データに接する⼈だからこそ気づける課題です。データの汚さにストレスをためてしまいがちになりますが、同じ思いをしていそうな人を巻き込みながら「どうすれば解決できるのだろう」と前向きに捉えていくと、最終的に「データを経営資産の1つにする」という⼤きなゴールに近づけるかもしれません。私たちの取り組みもスタートしたばかりですが、どう進むべきかの道が⾒えてきたので、組織的に取り組んでいきたいと思います。

イーウェルは、データ分析、そしてデータマネジメントを推進することで、企業価値をさらに⾼めていく所存です。キーエンスの方々には、そうした当社の取り組みを優れた技術、製品、サポートを通じて⽀援いただくことを希望いたします。今後ともよろしくお願いします。

株式会社イーウェル

「データマネジメントを全社的な重要課題と位置づけ、組織的に取り組んでいます」

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