株式会社京進

株式会社京進 取締役 第一運営本部 本部長 田中 亨氏と、執行役員 教務部 部長 森岡 直史氏に、KIを導入した経緯とその効果について詳しく聞きました。

「少子化でも成長を実現。データ駆動型の学習塾経営へ」

株式会社京進について

株式会社京進は、京都市を本拠とする総合教育企業です。京都、滋賀、大阪、奈良、愛知を中心に展開する学習塾事業のほか、近年は「人の一生を支援する」というコンセプトのもと、保育、介護、日本語教育などへ事業を拡張、売上高はこの7年で118億円から236億円へ、2倍以上の急成長を遂げています。事業所数、約520拠点(海外含む)。

創業 1975年
年商 25,420百万円(連結)
従業員数 2,194名

※この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数で記述しています。

活用・目的・評価

活用方法

  • ・退塾率防止のために活用
  • ・将来的には複数部門・事業での展開も視野に

導入目的

  • ・講師個人の能力に任せていた「教育サービス」を標準化したい
  • ・後手に回っていた問題対処を「先回り」して対処したい

KIへの評価

  • ・社員のデータに対する認識が大きく変化。議論も盛んに
  • ・経営のステージを一段階レベルアップさせてくれるツールとして期待

少子化の中でも成長し続けるためのデータ分析

KIの活用状況を教えてください。

京進はデータ分析を、本部・現場の両輪に続く「成長のための第三の車輪」と位置づけています。従来、現場の講師力に頼ることの多かった塾事業の運営を、データ駆動型に変えることで、少子化をはじめとする市場環境の変化に対応し、継続的な成長を実現させます。KIは、この取り組みの中核的なツールになります。

現在は、はじめの一歩として「退塾率を抑えるための分析」に取り組んでいます。分析対象データは、生徒の学校や塾での試験の得点、つまり「成績情報」、入塾(退塾)の時期、出欠状況、受講科目、宿題、イベントへの取り組み状況など「受講情報」、そして保護者や生徒を対象に実施した「アンケート情報」の3種です。

この観点で「過去、実際に退塾した生徒のデータ」を分析し、そこに特有の傾向や特徴量を把握します。その上で現在、在籍している生徒の中から「退塾した生徒と同じ特徴量を持つ生徒」を見出します。そうした生徒は、「将来、退塾する可能性のある生徒」と見なせるので、現場は、すみやかに対策をおこないます。早期に認識できれば、早期の対処が可能になる。データ分析に基づいて、さまざまな施策を先取り的に行うことにより、退塾率の低減に繋げます。

数ある課題の中から、現在特に「退塾率の低減」に取り組んでいるのは、端的にいえば「これが最も手がつけやすく、最も早期に効果が期待できるから」というのが理由です。退塾分析に必要な、成績情報や受講情報、アンケート情報などは、新たに集めなくても「すでに手元にある」データなので、「はじめの一歩」として取り組むには最適です。また少子化が進む現在では、入塾率の増加を図る以前に、まず退塾の防止を進めることの方が、施策として適切であると判断しました。

この他、人事や労務の分野でも、近々にKIの活用を開始します。企業活動すべてにデータ分析を適用することで、学習塾事業に止まらず、保育、介護、日本語教育など新事業も共に成長させていきます。

顧客数の減少と、市場規模の拡大が同時発生する、特殊な市場環境

データ分析を「成長のための第三の車輪」として重要視するようになった、社内的な背景を教えてください。

学習塾業界は、顧客総数(子どもの数)が減少する一方、業界全体の売上高は増えているという、ある種、特異な状態にあります。まず顧客数の減少は、誰もが察するとおり、少子化の影響です。一方、市場規模の拡大は、子ども一人当たりにかける教育費が増えていることが理由で、この傾向は都心部で顕著です。

この教育費の増加は、コロナ禍の影響で学校の休校がつづき、その遅れを埋め合わせたいという、ある種の教育不安が原因だと推察されます。これが今後も続くかは不明ですが、一方で「少子化(=顧客減少)」は確定した未来といえます。

顧客数が減れば、供給側による「限られた顧客の取り合い」が自然に生じます。いや、選ぶ権利は顧客側にあるので「取り合い」ではなく「選ばれ合い」というべきでしょうか。このとき良い教育サービスを提供し、顧客に「選ばれる側」となれるなら、この先も着実に成長できます。顧客単価が増え続けるなら、なおさらです。一方、もし「選ばれない側」になると、負のスパイラルに陥り、最悪の場合、市場から退出せざるをえなくなります。

スーパー講師に頼らない成長デザインを

顧客に「選ばれる側」になるために、どのような施策をおこなったのですか?

まず、どうやって顧客に選ばれ続けるほどの「高品質の教育サービス」を実現するかを考えました。従来の塾業界の考え方では、「人の力、講師の力」が全てでした。いま取り組んでいる退塾の低減についても、従来は「講師個人の能力」に頼って対策をしていました。

実際、スーパー講師と呼ばれる人の察知力には凄いものがあり、たとえば、テスト前のこの時期になぜか宿題が出ない、イベントでもやる気がなさそう、最近、遅刻気味、そういえば目にやる気が感じられない…など生徒のさまざまな状況を総合的に観察、判断し、退塾を防ぐべく、最も適切なタイミングで声掛けなどをおこないます(退塾は講師個人にとってもマイナスとなるので、講師も自然と真剣になります)。

しかし、そうした属人的な塾運営は、今までそれで良かったとしても、今後もそれでよいのか、という問題が出てきます。属人的な講師の努力が全てを決める、というのは、基本的に小規模な塾を運営する方法論です。しかし現在の京進の課題は、ここ数年で事業拡大とともに120億から240億まで倍増させた売上高を、さらに成長させることです。

それを実現するには、都市圏のみならず日本各地の、たとえば本社から目が届かないような、フランチャイズの教室であっても、一定の教育品質を顧客に提供する、そんな再現性のある教室運営を確立させる必要がある。仕組み、組織力に基づく成長の方法論が求められています。

その一環として、まずは従来の「事後対応型」の問題対処を「先回り型」に変えていきたい。現状では、問題が起きたそのあと、つまり退塾した、成績が下がった、合格実績が下がった、など、まず何か問題が顕在化したその後で、問題を解決しようとしています。そうではなく、問題に先駆け、前触れとして現れる「先行指標」、これを先取り把握して、問題に先回り対処したい。つまり、問題をそもそも発生させないようにしたい。これをデータ分析を通じて実現していきます。

小規模の試験導入をして分かったこと

その「先回り型」の実現を目指した結果、冒頭にお話されていた「退塾率を抑えるための分析」に、KIを活用するという流れに至ったのですね。

そうです。ただ実は、KIを導入する前に、とある別の製品を導入したことがあります。試験導入が可能なほど価格が手ごろだったので、「まずはやってみよう」ということになったのです。

しかし結局、この製品で、期待した結果は得られませんでした。まず基本仕様の点において、その製品では、「分析前にこちらが仮説を考え、それをシステムに教える」必要があり、これにはやや首をかしげました。AIを謳っているのであれば、仮説とか特徴量とかはAIが考えてほしい。それをやるのがAIなのでは、と正直思いました。

またデータを事前にひたすら前加工する必要があり、これも困りました。あまりに面倒なので、最後は「とにかくデータをつっこむ」ことになってしまい、それで出てきた分析結果が果たして有意なのか、最後は分からなくなるということもありました。

また、そのサービスでは提供されるのは製品だけであり、専門家の伴走サポートなどはありません。しかしデータ分析の素人である私たちにとって、専門家の助力なしに自走するのは、さすがに無理がありました。 この試験導入を通じ、会社を変革する中核ツールとして使うからには、自走できる状態を目指す必要があること、それを痛感しました。データ分析を推進するには、優秀なデータ人材が必要であると再認識したわけです。

しかし、そんな人材が労働市場で簡単に見つかるとは思えないし、いたとしても、それが弊社に来てくれるかどうか、また弊社の企業風土に「合うかどうか」もわかりません。

しかしKIのサービス内容ならば、ある程度の能力、適性が担保されたデータサイエンティストが、製品を使っている間、私たちを伴走サポートしてくれます。自力で労働市場からデータサイエンティストを探すことの、手間、費用、成功確率などを考慮した時、これは成果に繋がる期待感がある、と確信しました。

その後、社内に同様の説明をし、検討を経たのち、KI導入に至りました。

現場のデータ認識の解像度が上がる

KIの導入効果を教えてください。

最も手ごたえを感じるのは、現場の社員の「データ認識の感性、解像度が上がってきたこと」です。以前の現場のデータ感覚は、「確かに必要だ。積極的に取り組んでいくべきだ」という、ある種「ふわっとした熱意」でした。しかし最近は「どんなデータを、どのように蓄積するのが最も効果的か」など、議論の内容が具体的なものに変わってきました。

また以前は、成績データや出欠データなど、バラバラに解釈していたのが、今は各データの連携やつながりを俯瞰的にとらえようとする意識に変わってきています。社員のデータへの認識、態度は明らかに変わりました。

学習塾の職員はもともと「考えることが好きな人」の集まりです。データ分析のような方法論はハマれば、この上なくハマる。この好循環はこれからも持続させていく必要があります。

KIは経営ステージを一段、飛躍させるためのツール

今後の展望を教えてください。

KIは「経営のステージを一段階、飛躍させるためのツール」といえます。現場の教育品質と本部の経営品質、それを一気に上のステージへ引き上げてくれる期待感があります。

京進は従来の「本部と現場」という二つの車輪に、「データ分析」という三つ目の車輪を加えることで、これからも成長していきます。キーエンスはそうした弊社の取り組みを、優れた技術、製品、サポートを通じて継続いただくことを期待します。今後ともよろしくお願いします。

株式会社京進

「少子化でも成長を実現。データ駆動型の学習塾経営へ」

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