大きくは、社会的なデジタル技術の進歩と、私たちの情報を受け取る側である医師のニーズが変化したこと、これがデジタルマーケティングに注力している背景です。かつて医師への情報提供は、MRが対面でおこなっていました。よく言われるのは、病院の廊下でカバンを持ち、医師が来るのを待ち続けるMRの姿です。しかし、こうしたMR像はすでに過去のものとなりました。特にコロナ禍が深刻だった時期、MRが医師に対面で情報提供するのは、一部を除いてほぼ不可能でした。
いま多くの医師が「薬剤に関する情報をネット経由で得ること」を望んでいます。ネット検索、ウェビナー、メールやチャットによる質問、MRとのオンライン面談など、「自分が望む情報を、望む時に、望む形式で、望む量だけ、最小ストレスで受け取れる状態」を求めています。
近年は医師の「働き方改革」も進んでいます。働き方を変え、労働時間を短くする、そのとき情報取得に使う時間と手間を低減しようと考えるのは、当然の帰結です。医療情報を提供する製薬会社は、これら顧客の要望に対応、あるいは先行提案し、医師ひとりひとりに最適化された最高の顧客体験を実現する必要があります。
こうした課題意識に基づき、2016年に、私たちデジタルマーケティンググループが新たに設立され、さらにデジタルマーケティングプロジェクトZEUSも開始しました。
以上が、デジタルマーケティングが必要な大まかな理由です。一方、製薬業界にはデジタルマーケティングの推進する上での「難所」もあります。