キリンビール株式会社

キリンビール株式会社 広域流通第2支社EC部 林 頌子氏、田中 千恵氏に、KIを導入した経緯とその効果について詳しく聞きました。

「KIの新しい『対話型高速分析機能』で、その場でパッと「要因の深掘り」ができるようになりました」

キリンビール株式会社

キリンビール株式会社は、日本を代表する酒類メーカーの一つです。従業員数3,655名国内ビール・スピリッツ事業6514億円。

従業員数 3,655名

※この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数で記述しています。

EC大手流通での拡販のためにKIを活用

キリンビールでは、KIをどう活用していますか?

私たち広域流通第2支社EC部の業務は、Amazon、Yahoo!shopping、楽天などECモールで、ビールなど各種商品を拡販することです。KIは、そのためのデータ分析に使っています。

酒類販売は大きく、居酒屋など飲食店向けと、スーパー、コンビニなど量販店向けに二分されます。私たちEC部門が属するのは後者です。通常、EC部門といえば、自社商品を自社サイトで「直接販売」する形が一般的ですが、私たち広域流通第2支社EC部が担当するのは、Amazon、Yahoo!shopping、楽天などのECモールで、酒類をお取り扱いなさっている小売企業様に、卸様を通じて商品をお届けし、消費者の皆様にご販売いただくという間接流通チャネルとなります。

現在、統計によれば、日本のビールをはじめ食品・飲料のEC販売は、毎年20%増しで伸びています。弊社製品のEC流通も、ここ数年、著しく伸⻑しています。特に最近は巣ごもり需要が高まり、さらに販売が増えました。

本来、ビールのような「運ぶのが重い」商品は宅配に向いています。昭和30年代、40年代には、酒屋さんが瓶ビールのケースを家庭まで届ける形もよく見られました。

現代で瓶ビールのケースに相当するのは、350ミリ缶の24本セットなどですが、それなりに重さがあります。昨今EC需要が伸びている背景として、すぐに買えて自宅まで配送してもらえる手軽さが、伸⻑理由のひとつだと考えます。

この利便性は「一度、体感すれば」わかってもらえます。しかし、「お酒は、お店で買う物」という考えが強い消費者には、その「最初の一度」を体験してもらうのが難しい。逆に言えば、一度、体験してもらえれば、消費者は持ち帰らなくてよい利便性に気づき、その後も継続利用することが期待できます。昨今、ビールのEC流通は都市部で急速に伸びています。今後はこの動きが地方にも波及すると予測しています。

ECには、店舗のような「棚」の概念がありません。従来は、限られた店頭空間でいかに良い場所を取るか、目立たせていくかが重要でしたが、ECではよりパーソナライズされた顧客接点になります。またECは「365日24時間開店」なので、TVやスマホで何かを見て、その後すぐに買うという消費行動もありえます。

「ECは顧客データがわかる、一対一にパーソナライズした販促も可能」という点も特徴です。お酒を購入してくださるお客様が「ページをどのように回遊したか」、「どのような告知・広告に接触したか」、また、「なにを見て買った/買わなかったのか」など、お客様の行動情報をもとに販促を検討することができます。

ECでは顧客に紐づいた詳細なデータが蓄積されています。それを分析すれば、顧客動向を精緻に知ることができます。

提供されるデータはEC流通それぞれで異なりますが、大きくはPOSデータ、ID-POSデータ、行動データの3種類となります。「いつ、どこで、何が、どれだけ売れたか」という商品軸のデータに加え、「どんな人が、どのような行動履歴で」買ったのかまでわかるデータです。「年齢、性別」など属性情報、「購入するまでにどのページを見ていたか、商品を何番目にカゴに入れたのか」といった行動履歴がわかることにより、「ある人が、今日は○○を検討し、二週間後には××を買い、その後、一か月毎に○○を10本ずつ買うようになった」などの情報を、匿名化された状態で認識できます。

流通によっては「すべての販売情報」が提供されることがあります。「すべて」というのは、他社の販売情報も入っているということです。従来、他社の状況は、「営業マンのカン」「関係者へのヒアリング」などあいまいな形でしかわかりませんでした。しかし今はID-POSデータという一次情報を通じて認識できます。データは、毎週、毎月、毎年蓄積される膨大なものです。ここまで最終消費者と他社情報が詳しくわかることは、お客様を知る貴重な機会となります。

これらデータは当然、精密に分析し、フル活用する必要がある。KIは、そのために活用しています。

データがすべてわかるからこそ、顧客に寄り添いたい

酒類のECでは、たとえばどんな販促計画を立てるのでしょうか?

データがよくわかるからこそ、大規模な広告施策だけでなく、地味な施策にも注力しています。

ECらしい例として、「送料無料の合わせ買いを狙う」という手法があります。ECでは、「○○円以上、お買い上げの方は送料無料」のような形がよくあります。それが仮に5000円とし、現在の購入額が4500円だとします。「送料無料まであとちょっと」のニーズを考慮して500円程度のビール2本セットをつくっておく。たった500円と思うかもしれませんが、ECでは先ほど述べたとおり、「最初に一度使ってもらう」ことがすべての始まりです。したがって、「0回を1回にする」ための販促はとても重要です。

顧客データが詳しく見えるECでは「顧客に寄り添う」姿勢がいっそう重要です。ECの売り場を、「他社とシェア争いする戦場」と見なしてはいけません。そうではなく、どんな顧客がどんなとき、どんなふうにビールを欲するのか、それを顧客データをよく見て分析し、顧客それぞれから「ちょうどよかった」と思われるタイミングで、広告や告知を差し込んでいく。そんな顧客本位の販促を実現していきたいと考えています。

導入前の課題

KI導入前の課題について教えてください。

課題は「データは豊富にあるのに、十分、使いこなせていない」ことでした。データ自体はEC流通大手から、継続的に大量に提供されます。しかし、それを有効に分析する手法、道具が確立できていませんでした。私はEC部門に来る前は物流部門の所属で、データ分析の知識や素養は特にありませんでした。それでも何とかエクセルなどで分析しましたが、大量のデータを処理するには道具としてはやはり力不足で、時間もものすごくかかるし、柔軟性に乏しかった。データがあるのにうまく分析できない、「もったいない」状態にありました。

そんな時、社内の紹介を通じてKIのことを知りました。さっそくデモを見たところ、直感的に「ああ、これはすごい」と思えました。まず見た目、使い方がとてもわかりやすい。以前、これも社内の紹介で、とある高度分析ツールのデモを見たのですが、機能が高度であること以前に、操作画面が、あまりにゴリゴリのプロ仕様で、私が毎日、使っていくのはとうてい無理だと感じました。

一方、KIは、画面上のボタンの数も少なく、直感的に、「たぶんここを押すだけで何とかなるんだろう」とわかりました。私は、データ分析ツールは、私だけでなく部員全員が自分で使えたほうがいい、できれば営業担当者も自分で使ってデータ武装できる方がいいと思っていたので、この使いやすさは魅力でした。KIを使えば、データという宝を、本当に宝として扱える、そう強く感じました。その後、部内で起案し、承認を得て、導入に至りました。

KIは当初の予想通り使いやすいツールで、その後、データ分析は着々と進みました。しかし、KIが本当に真価を発揮したのは、新機能、「対話型高速分析機能(KIバージョン2.0)」が搭載されてからです。

新機能「対話型高速分析機能」で業務が劇的に改善

対話型高速分析機能の導入で、業務が劇的に改善されたとは?

ある時、キーエンスの担当データサイエンティストの方から「KIが大幅にアップデートして、バージョンが2.0に上がる。大量のデータを集計した後、なぜそういう結果になったのか、対話型でクリックしながら要因を深掘りできる機能が搭載される。ぜひ試してみて欲しい」と話があり、新機能を見せてもらいました。正直、「夢のようだ!すごい」と思いました。というのも当時は「分析の結果はわかる。でも、その結果に至った道筋がわからない。あるいはそれを知るためにおそろしく時間がかかる」というのが、まさに私たちの課題だったからです。

これは、KIを導入する以前から存在していた課題でした。データ分析をする。それをわかりやすくBIツールでグラフ化する。ここまでは何とかなります。ただ、会議でBIツールのグラフをじっと見ても、グラフの背後の「理由」がわからない。そこにたとえば営業担当が強い関心を持ってくれたときは、「次回までに調べます」と言って会議を終え、また分析しなおしになる。そして、次回の打ち合わせまでに、ようやく理由がわかった時には、営業担当の関心は別の事に移っていたりします。鮮度のない、時機を逸した分析結果は、いくら正しくても、現場に影響力がありません。

議論を通じて、グラフの背景を探ろうとも試みましたが、やはりうまくいきませんでした。たとえば、ある時期、売り上げがなぜか下がっている。その原因は何なのか議論する。でも結局は「もっともらしい推測」の域を出ない。最後は、「やっぱり、価格かなぁ...(安くするしかないかなぁ)」という頼りない結論で会議が終わりそうになるということもよくありました。

BIツールは見える化・グラフ化は得意。でも、リアルタイムに要因を掘ることは難しい。一方、KIの新機能は、この「集計結果の『要因』が見えない」という問題を解決してくれました。使い方の例は次のとおりです。

  • 1.KIで、たとえば、時系列の売上推移集計表をつくる。
  • 2.ある時期、売り上げが凹んでいる変化点が見つかる。単純に「なぜかな」と思う。
  • 3.そのデータ部分をクリックする。
  • 4.すると、エクスプローラで親フォルダをクリックすると内部の子フォルダが展開されるかのように、「データの内訳」を示すデータがズラッと表示される。
  • 5.それを見て「商品Aだけ凹んでいる。これが原因?」と推測が進む。そこで商品Aをクリックする。するとさらに細かく内訳が展開される。
  • 6.この他、「他の流通ではどうか」「同ジャンルの他製品に比べてどうか」「通年でどうか、3年ではどうか」など、商流軸、時間軸、外部環境軸など、さまざまな観点から謎解き感覚で、原因追及ができる。

この新機能は、「速い=手軽」なのが魅力です。通常のデータ量であれば、展開は数秒で終わるので、会議の席で、営業部員と画面を見ながら原因追及することも可能です。「疑問が出たら、とりあえずクリック。そうすれば次の世界が開ける」「データの『なぜ』が、その場でわかる」という状態が実現しています。すぐわかる、一手間、二手間少ないことは実は重要です。結局、そのわずかな手間の差が、データ分析を日常的にやるか、やらないかの大きな差につながるからです。

新機能を使いはじめて、営業担当者もデータ分析への参加が積極的になりました。以前は私に聞いてもすぐに答えがでないと思っていた質問でも、KIでその場でパッと深掘りできることがわかり、「だったらこれも知りたい」と質問が積極的に出るようになりました。営業担当者は、EC流通各社のバイヤーに向け、さまざまな提案をおこないます。その時、バイヤーが気にするのがデータです。バイヤーの方々から「この時期、この商品はどうして調子が良かったのですか?」「今度の提案で、どれぐらい売れると思いますか?」と質問を受けます。その時、営業担当者は、データに基づき、自分の言葉で回答できることが望ましい。その事前準備が、KIを通じ、徐々にできる状態になってきています。

実施した施策は、必ずデータを分析して検証します。施策をおこなった後の、販売実数、シェア、伸び率、商品間比較、時期比較などを、さまざまな角度で検証する。そのデータを元に次は、「前回の結果がこうだったので、それをふまえ...」という形で新たな提案ができる。PDCAを回すことで、提案内容の「厚み」が増します。

エクセルを使っていたころは分析に数時間かかっていました。今はKIの新機能を使えば、さっさと分析できる。毎月のデータ更新はワンクリック。だから集中してどんどん分析を進められる。疑問が浮かんだとき、とりあえずの答えが出せる。それが報酬となり、次々、疑問が頭に浮かび、頭がなぜなぜモードで活性化される。会議、分析の単位時間あたりの量と質が向上しており、まさに生産性の向上です。キーエンスさんは、日常的にこういうデータを基にした仕事の進め方をしているから、生産性が高くなり、高収益を上げているのかと実感しました。

先行ユーザーからのアドバイス

その他、KIを先に使っている立場からアドバイスなどあればお聞かせください。

新機能の利用を進めるさなか、私たちはもっぱら自宅で仕事をしていました。販促会議はオンラインでおこない、KIは遠隔操作と画面共有の形で使いました。会議は、対面のときと同じ感覚、同じスピードで続けることができ、道具さえ揃っていれば不測の事態も効率を落とさずに乗り切れると実感しました。

KIを使い始めて「脳が拡大された」感覚があります。いま、EC部門では数百種類の商品を取り扱っており、この商品点数になると、手作業と脳だけでは、全体像が把握できません。でも、KIを使えば、全商品を相互比較、総合分析できます。頭脳の把握力、統合理解力が拡張された感覚があります。

キリンビールは、「よろこびがつなぐ世界へ」のスローガン通り、ひきつづき、お客様に選ばれる飲料企業を目指していきます。キーエンスにはそうした弊社の取り組みを、優れた技術、商品、サポートを通じて後方支援いただくことを希望します。次の新機能にも期待しています。今後ともよろしくお願いします。

キリンビール株式会社

「KIの新しい『対話型高速分析機能』で、その場でパッと「要因の深掘り」ができるようになりました」

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