⼀般論でいえば、⼤規模BtoBである建設業は、(BtoCに⽐べると)データ分析が活⽤しにくい業態といえます。BtoCには、「⼤量⽣産(または仕⼊れ)と⼤量販売」、「顧客は不特定多数」、「⽐較的に安価、リピート頻度も⾼い」という特徴があります。
⼀⽅、建設業は、「注⽂⽣産、⼀品⼀様(⼀つ⼀つの建物がすべて違う)」、「顧客は特定少数」、「きわめて⾼価」という業態です。このように顧客の⺟数が少ないため、BtoC、たとえば⼤規模ECサイトがするようにデータ分析を行うのは困難です。
しかし、この前提を踏まえてなお、私たちデジタル戦略推進室は思考停⽌することなく、建設業におけるデータ分析の⽅法論を模索していきたいと考えています。何か⽅法があるはずです。
清⽔建設株式会社
清⽔建設 デジタル戦略推進室 副室⻑ 伊藤 健司⽒、同推進室 兼 AI推進センター 主査 遠藤 孝之⽒、同推進室 江村 裕太⽒にKIを導⼊した経緯とその効果について詳しく聞きました。
「建設業という属人性の高い業態だからこそ、データ分析の可能性を追求しています」
清⽔建設株式会社について
清⽔建設株式会社は⽇本を代表する建設会社の⼀つです。創業は1804年(⽂化元年)と古く、すでに200年以上の社歴を持つ同社は、⼤⼿ゼネコンの中で唯⼀、社寺建築部⾨を有しています。
2013年、出雲⼤社でおこなわれた60年ぶりの式年遷宮でも、これに伴う社殿の改築を同社が担当しました。また、500億円を投じて東京都内に技術研究所を建設中です。
年商 | 1兆6,649億円 |
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従業員数 | 10,714名 |
創業 | 1804年 |
※この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数で記述しています。
建設業界とデータ分析
建設業において、データ分析はどのような形で有効になるのでしょうか?
データ分析の想定⽤途
建設業でのデータ活⽤には、どんな形がありうるでしょうか。
今、想定している主な可能性は次の3点です。
- 1.「災害・事故の発⽣傾向の分析」
- 2.「『成功する現場』の傾向分析」
- 3.「営業案件分析」
「災害・事故の発⽣傾向の分析」
可能性1. 「災害・事故の発⽣傾向の分析」とは具体的には?
これら災害事象については、ヒヤリハットも含め、詳細なデータが社内に蓄積されています。このデータを分析して、災害防⽌につなげたいと考えています。
これまでも「暑い夏場は⾼齢者が倒れることが多い」などの傾向が知られていました。しかし、そうした「常識的な因果関係」「ふつうに考えてもわかること」のほかに、もっと意外な要因があるのではないか、と思うわけです。この視点で、災害が起きた現場の、湿度・温度・天候など気候条件、被災者の年齢・性別・経験年数などの属性、場所・⼯期・⼯法・建築物の種類などの現場情報など、あらゆるデータを分析し、災害の原因となる「未知要因」を発⾒したいと考えています。
「『成功する現場』の傾向分析」
可能性2. 「『成功する現場』の傾向分析」とは?
建設の、特に現場は「あらゆる点で属⼈性の⾼い場所」です。各現場の統括管理者を「⼯事⻑」と呼びますが、トップクラスの⼯事⻑になると個性豊かな⼈が多く、何か困難が起きたときでも、それぞれ独⾃の、時には⼀⾒、⾮常識にすら⾒える⽅法を使って、難局をしのいでしまいます。同じ設計図、同じ課題に取り組む場合でも、着⽬するポイントや発想法が、⼯事⻑ごとにまったく異なることも少なくありません。
⾒積もりの世界にもスーパーマンがいます。図⾯を少し⾒ただけで、「⼯期は○ヶ⽉、⼯費は○億円ぐらいかな」とボソっとつぶやく。そして、最終的に、ほぼその⾦額に落ち着いてしまうのです。このように、建設現場は仕事の属⼈性が極めて⾼いため、あまり「⼀般化・標準化」という発想になじみません。とはいえ、そのようなスーパー社員もいずれは退職します。従って、彼らが持つ暗黙知を、⾔語化・データ化し、次世代に承継する必要があります。ここでデータ分析を活⽤したいわけです。
弊社では年間で数百に及ぶ建設案件があり、各現場のデジタルデータは過去20年分にわたり社内に蓄積されています。データの内容は、「⼯事⽇報データ(何年何⽉何⽇に、誰がどんな作業をしたか)」、「購買調達データ(どんな資材を、いつ、いくらで発注して、いつ納⼊されたか)」、「事故・災害データ(どんな状況で、どんな事故・災害が発⽣したか)」などです。この他、設計図、⾒積書、⼯事計画書も網羅的に保管しています。
これら社内に蓄積してきた膨⼤なデータを分析して、「成功した⼯事に共通する傾向」、あるいは「苦戦した⼯事に共通する傾向」を割り出せないかと考えています。
おそらくネガティブ情報の解析の⽅が、先に結果がでやすいと考えています。ネガティブ情報とは、「この条件が揃ったとき、その⼯事は、⾼確率で難航する」、「品質事故は、なぜか○⽉に起こることが多い」などです。失敗や事故の「予兆」が分かれば、回避するための準備⾏動を起こすことが可能です。
なお、こうした分析は「スーパー⼯事⻑」ではなく、平均レベルの⼯事⻑や担当者に特に役⽴つでしょう。平均値を底上げできれば、会社全体のレベル向上につなげられます。
「営業案件分析」
可能性3. 「営業案件分析」とは?
実は、建設業でいちばんデータ分析を適⽤しにくいのが、この営業分析かもしれません。というのも建設業の営業は⾮常に期間が⻑いからです。営業開始から受注に要する時間は、3年、5年はあたりまえ、10年も珍しくありませんし、20年かかった案件さえ過去には存在します。
ここまで期間が⻑いと、案件の途中で、「客先の⼈事異動」「事業環境の変化」「会社の⽅針の変更」など、さまざまな不確定要素が発⽣します。案件は⼀つ⼀つ違い、不確定要素によりさらに分岐が多くなる。今までは「建設業の営業をデータ分析するのは困難」という考えに陥りがちでした。
しかし、今は別の⾒⽅を変えて、「⼀⾒、データ分析が不向きに⾒える分野だからこそ、データ活⽤できれば、受注要因や失注要因について⼤きな発⾒があるはずだ」と思っています。決めつけず、予断を⼊れず、良い意味で無機質に分析していきます。
これら3点の他にも、「原価計算分析」「調達⾒積もり(購買データの傾向分析)」「技能労働者へのアンケートの結果分析」「災害発⽣分析(ヒヤリハット)」「⼈事系データ分析」「セキュリティインシデント分析」などの分野でも、データ分析が課題解決のカギを握ると考えています。
「思い込みを排除した分析」への期待
KIを導⼊した経緯を教えてください。
KIのことを知ったとき、「建設業のデータ分析にも使えるかもしれない」と感じました。関⼼があったので、まずはデモを⾒ることにしました。デモを⾒ながら、「これは『ヒント』をくれそうなツールだ」と思いました。というのも、KIの分析コンセプトは、「原因に対して仮説を⽴て、その仮説を検証するためにクロス分析する」というスタイルではなく、「この値を最⼤化したいという⽬的変数を設定し、それに影響⼒の⾼い他の変数を分析して探してくれる」というものだったからです。その⽅が、「意外な気づき、ヒント」が得られそうです。
たとえば、あえて「災害・事故の起こる可能性を『最⼤化する』」という⽬標で分析したとすれば、KIが「事故を最⼤化するために影響度の⾼い要因(変数)」を⽰してくれます。この仕様なら、「⾃分たちで思いつける範囲の仮説」を逸脱した、「思いもよらない要因」を⾒つけ出せる可能性があります。
もちろんKIを導⼊するには費⽤がかかりますが、新たにデータ分析の専⾨家を雇ったり、専⾨会社に分析を依頼したりすることを考えれば経済的です。また、いずれは社内データの分析を、私たちだけではなく、むしろ現業部⾨の現場社員に⾃らおこなってほしいと考えています。KIはインターフェースが簡単なので、⼗分可能でしょう。ソフトウェアの稼働率が上がれば、費⽤対効果はさらに⾼まります。
KIは2ヶ⽉前に導⼊したばかりですが、すでに現場部⾨での活⽤に⼿応えを感じ始めています。たとえば⼯務部⾨では、50代の社員がKIを使いまくっており、すでに私たち以上に操作に熟練しています。おそらく彼の中には、「⻑年、分析したくて、うずうずしていたこと」が⼤量にあったのでしょう。そこにKIという便利な道具が登場したことで、分析欲に⼀気に⽕がついたのだと予測します。KIの使いやすさは期待通りです。
清⽔建設 デジタル戦略推進室は、引き続き「建設業でのデータ活⽤」を推進していきます。キーエンスには弊社の取り組みを、優れた技術、提案、サポートを通じて⽀援いただくことを希望します。今後ともよろしくお願いします。
清⽔建設株式会社
「建設業という属人性の高い業態だからこそ、データ分析の可能性を追求しています」
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